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<DongHae>


ヒョクとは、美容学校の同級生。


出会った瞬間に『あ、俺この子と友達になる』って、ピンときた。

予感は的中で、入学して1週間も過ぎる頃には、幼稚園くらいから知ってるかのような雰囲気だったと思う。



授業が終わるといつも一緒に学校を出た。

ヒョクの家は俺よりも2駅先にあって、いつもホームでバイバイ。



お祖父さんの古本屋の2階に住んでいると入学早々には聞いた。

初めてヒョクの家に行ったのは、入学から2カ月くらい後だと思う。



1階の古本屋に足を踏み入れた時の感覚は、なんとも不思議なものだった。

時代からどこか取り残されたような、そう、ノスタルジックってこういうことを言うのかな、って。


独特の空気感。

おとぎの国の入り口。


奥のドアが、タイムスリップのためのトンネルに繋がっている気がした。

本当に繋がってたのはトイレだったけど。




「いらっしゃい」



柔らかな声で、ヒョクのお祖父さんがカウンターから声をかけてくれた。


そのお祖父さんの隣。


こちらには気づきもせず、夢中で本を読んでいる子がいた。


フワフワした髪が、気持ち良さそうで。


すっかり本の世界にのめり込んでいるのか、驚いたように目を見開いたり、口元が緩んだり、眉間に皺が寄ったり、短時間でコロコロ表情が変わった。



「ドンへ」



ヒョクに呼ばれてハッとした。


すっかりその子に見入っていた。



「あー、あいつ読み始めるとああだから、気にしないで」



そう言って2階へ上がっていくヒョクを追いかけた。



「ねぇヒョク、あの子って…」


「弟。リョウク」


「…へぇ…」





……リョウク。





それが、俺とリョウクとの出会い。








その日は晩ごはんをヒョクの家でご馳走になることになった。


お祖母さんが夕食の支度を始めた頃、リョウクが2階に上がってきて手伝い始めた。

時々、これはどうするの、あれはあったっけ、なんて笑って言いながら。



スッと通った声。

ふと見せる、可愛らしい笑顔。



俺に気づいて、今更のように「いらっしゃいませ」と言った。



「いつも兄がお世話になってます。ドンへさんですよね。弟のリョウクです」



ちょっとだけ緊張したみたいな、はにかんだ笑顔。



「…あ、ども…」



それが、初めての会話。







あれから、もう何年経ったかな?


6年? 7年?


うわっ、俺も大概しつこいね。




いつからかは、はっきりわからない。


もしかして、初めから?


そうかも。


でも、違うかも。


もう、どっちだっていいや。






リョウク。





もう1人の兄貴、って言ってくれるけど。


俺、本当は兄貴じゃ嫌だってもう何年も思ってる。


言える日が来るのかな?


言っちゃったらきっと、本当の兄貴に殴られるんだろうな。


もう会わせてもらえなくなるんだろうな。




そう思ったら、やっぱり言えないや。





好きだなんて、言えない。



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2019.03.03 Sun l 《好きシリーズ①》好きだなんて言えない【完】 l コメント (2) トラックバック (0) l top


<RyeoWook>


昔ながらの商店街。


常連しか行かないような喫茶店、

品揃えは豊富ではないけれど一通りの物が揃う日用品店、

小さい頃よく行った駄菓子屋さん、

ちょっと汚いけれどハズレのないラーメン屋さん、

いつもおまけしてくれる八百屋さん、

おやつがわりのメンチカツが美味しいお肉屋さん、

後継ぎがいなくてシャッターが下りたままのお魚屋さん。



そんな商店街の片隅に、僕の古本屋はある。






幼い頃に両親が事故で亡くなり、1つ上の兄と共に古本屋を営む祖父母の元で育った。

祖父の影響で本が大好きだった僕にとって、この店はまるで不思議の世界の入口だった。

同級生達は野球にサッカーに走り回っていたけれど、カウンターの祖父の隣に椅子を持ってきて、片っ端から店の本を読み漁る方が僕には楽しかった。



大学の時に祖父が亡くなり、その後祖母が引き継いでいた店を、卒業を機に僕が継いだ。

店の経営は、まぁ楽ではない。

むしろギリギリ。

近くに通っていた大学があるせいか扱うものの半分以上はそのテキストや資料の類いで、年度変わりにはそのやりとりがあるけれど、もしそれがなかったら正直成り立たないと思う。

僕は僕なりに工夫はしているつもりだけれども、それがどれほど効果があるのか、それとも全然ないのかはよくわからない。



ただ、この空間を大事にしたい。



それだけ。








「リョウガ」




その声に、未だに心拍数が上がる。


顔を上げた先。

くりっとした目、白い肌、猫背の背中。



「今日はなに?」

「ん? 頼まれ物」


時々ここに顔を出す元恋人は、今日も教授のお使いのようだ。




卒業して店を継いだ僕と、そのまま院に進んだキュヒョンの時間は、どんどんすれ違った。


研究一色の生活に、僕の居場所などほとんどなく、僕も店を継いですぐでいっぱいいっぱいで、会えないことに不安や不満を抱く余裕もなかった。


抱き合うことがなくなっていき、

キスすることがなくなっていき、

触れ合うことがなくなっていった。


お互い、その状況を甘んじて受け入れてしまった結果、

僕たちは終わった。


決して、嫌いあって別れた訳ではない。


ただ、きっとこの先やり直すことは無いと思う。



それでも。



僕を呼ぶ声に、まだ心が騒めく。



僕を見る瞳に、まだ心が揺れる。



今も愛しているかと聞かれたら、首を横に振るだろう。



でも、今も好きかと聞かれたら、どう答えていいかわからない。



今の僕にとって、キュヒョンはそういう存在。





ねえ、キュヒョナ。



僕は、どういう存在?



聞きたくて、聞けない言葉を



今日も僕は飲み込むしかないんだ。



2019.03.05 Tue l 《好きシリーズ①》好きだなんて言えない【完】 l コメント (2) トラックバック (0) l top


<EunHyuk>


手に職をつけたかった。


じいちゃんもばあちゃんも、愛情を注いでくれたのはよくわかっている。

それでも、この古本屋の稼ぎで俺ら兄弟を育てるのは楽ではなかったはずだ。




美容学校を選んだのは、どうせ手に職をつけるなら少しでも興味のあることにしたかったから。

服飾系も考えたけど、確実に就職するなら美容師の方がいいと思った。


消去法のように、なんだか打算のように進路を決めたけど、後悔はしていない。

むしろ、あの時の俺を誉めてやりたい。



就職して5年。

今では指名してくれるお客様も増えた。

毎日ほぼ立ちっぱなしで、手も荒れ放題、後輩の練習に付き合えば深夜の帰宅もザラだし、休みも講習で潰れたりとか色々あるけれど。


充実していると思う。


鏡越しに見るお客様の笑顔に、パワーをもらう。


今日も誰かを少し幸せに出来たと、安心する。


その積み重ねが、俺を幸せにしてくれる。






じいちゃんが亡くなってばあちゃんが引き継いでいた古本屋を、大学を卒業したら継ぎたい、とリョウクが言い出した時、俺はそれに反対した。

古本を扱う大手のチェーンなども今は多い中で、正直言ってこの先もずっとこの店を維持していくことは難しいと思っていた。



リョウクの気持ちはわかる。


俺だってこの店が好きだ。


でも、現実的に難しいことに賛成はできない。


弟に、苦労をさせたい訳はない。




それでも、リョウクは譲らなかった。


頑固な奴なのはわかってはいたけど、あの時ほどそれを感じたことはない。


結局、俺が根負けした。


「うまくいかなかったら、その時に受け止めてあげようよ」

そうドンへは言ったけど。





ドンへはリョウクに甘い。


リョウクも、もう1人の兄貴として慕っている。




でも、ドンへ。


受け止めるのは、お前の役割じゃない。


いくらお前がいい奴でも、ダメだ。



親友の恋を、本当なら応援してやりたいとは思う。

大事な親友のためなら、俺に出来ることはしてやりたい。

でも俺は、お前の親友である前に、リョウクの兄貴なんだよ。



偏見を持っているつもりはない。

それでも、男同士の恋愛なんていばらの道、進ませたい訳はない。




リョウクも同じ気持ちなら別だ。

でもあいつがお前をそういう風に見ていないことは、お前にもわかるだろう?

会ったり、紹介されたりしたことはないけれど、恋人もいたようだし。

どうやらもう別れたみたいだけど。




もしリョウクが妹なら、あるいはお前が女なら、喜んで協力したのにな。


だって、羨ましいくらいに、一途に、

リョウクを想っているのがわかるから。


そんな風に俺も誰かを愛してみたいと、

愛されてみたいと思うから。





ごめんな。

応援してやれなくて。





だって俺は、兄貴だから。


弟の幸せを願う、兄貴だから。



2019.03.07 Thu l 《好きシリーズ①》好きだなんて言えない【完】 l コメント (2) トラックバック (0) l top


<SiWon>


踊っているみたいだ。


そう思った。




いつもの美容室の予約が取れなくて、でも他に日がなくて、仕方なく予約サイトで評判のいいところを検索し、空いていた一枠を押さえた。

いつもと近い感じに仕上がれば、まあいいかと思っていた。




「いらっしゃいませ」と現れた彼の笑顔は、そのおしゃれな雰囲気と比べるとなんだか幼かった。


目のラインギリギリの前髪からのぞく、一重の割に大きな瞳が鏡越しに見つめてくる。


こちらの要望に口角を上げて微笑んだ。

柔らかく、優しく。

聞けば同い年だという。



しかしハサミを持つと、その表情はガラッと変わった。


時々確かめるように鏡越しに向けられる眼差しは、先程と違って鋭い。


そして、その細められた目元に、なぜかどきりとする。


ハサミと、櫛と、俺の髪と、彼の指が、

1つの生き物のように絡まり、流れ、離れる。


しなやかなその腕が、すべてをコントロールするかのように踊る。




気づけば、すべてが終わるまでずっと彼を見ていた。

「どうですか?」

そうすると、鏡越しにこちらを見る彼と当然バッチリ目が合うわけで…


「えっ…あ…はいっ」


明らかにおかしい反応だと自分でも思う。

彼は、びっくりしたみたいに目を見開いて

そしてニカッと笑った。






いつも行っていた美容室には、行かなくなった。


月に一度だった今までよりも、少し早いペースで髪を切る。


3週間に一度の、彼のステージ。


俺だけのためのステージ。






「なんだかちょっと前と髪型違いますよね?」

事務所のスタッフにそう言われ、確かに彼に切ってもらうようになってから扱いやすくなったなと思う。

通い始めてから何回もなるのに、今更そんなことに気づく。

彼の名前だとか、実家が古本屋だとか、弟さんがいることだとか。

彼についてのことには関心があるのに、せっかく彼が切ってくれた自分の髪にはさして興味はなかったのだ。

プロである彼に対して、なんだかとても失礼なことをしていたのかもしれない。





「以前よりは少し量を減らしてみてたんですよ。扱いやすくなったのならよかったです」

次に訪れたとき尋ねた俺に彼は言った。

「でもほんの少しだったんですけど、気づいてもらえたんですね」

ちょっと照れたように細められた目元がかわいらしくて、頬が緩んだ。


「あの…」

「はい。なんですか?」


美容師と客、という垣根を、越えたくなった。


「同い年なので、タメ口で話してくれません?」

「え?…あ、でもお客様にそれは…」


それなら。


「じゃあ、一緒に食事にでも行きませんか?」


「……は?」


初めて、彼の素の表情が見られた気がする。



「友達ならいいんでしょう?」








SS7 in JAPANのDVDが届きました〜

トレカ……


シウォンでした(^-^;

思わず苦笑いでパッケージを閉じましたw

シウォンの回の日に、シウォンのが来るとは…

これも運命ですね( *´ ω ` )



2019.03.09 Sat l 《好きシリーズ①》好きだなんて言えない【完】 l コメント (2) トラックバック (0) l top


<KyuHyun>


その瞳が揺れるのを見て、安堵する。


今もまだ、心の中に少しでも俺がいるとわかるから。


この気持ちが、愛なのかただの未練なのかはよくわからない。


もう一度手を伸ばしたいような、

でももう二度と手を伸ばしてはいけないような、

どちらともつかない感情。






リョウクと出会ったのは、大学に入ってひと月程経った頃だった。


毎日続く学食のあまりにもの混雑にとうとう耐えかねて、売店で買ったパンを片手に中庭に出た。

どこのベンチもまるで誰かの指定席のように埋まっていて、かなり外れの方まで空いているところを探しにいった。


やっと見つけた大きなプラタナスの木陰の空席にどさりと腰を下ろし、パンの袋を破った瞬間だった。


「あっ……」


その声に顔を上げた。

大学生にしては幼い、男にしては可愛らしいキョトンとした顔をして、リョウクはそこにいた。


そこは、リョウクの指定席だった。


「すみません…他に空いてなくて」

「いえ…あの、一緒に、いいですか?」


確か、最初の会話はそんなんだったと思う。


リョウクは膝の上にサンドイッチを広げ、その隣で俺はパンをかじった。

その日は、それ以上話すことはなかった。






なんとなく、毎日そのベンチで過ごすようになった。

いつも俺は食べ終わると、時間までそのままそこでスマホのゲームをし、リョウクは食べ終わると、いつも本を読んでいた。

講義に遅れないためなのか、アラームをかけて。




その日はいつもなるはずのアラームが鳴らなくて、あれっ?と思った。

どうしたんだろうと隣をうかがった。

すっかり本の世界に入り込んで、読みながら何を考えているのかありありとわかる表情で、正直本の内容よりも本を読むリョウクを見ている方がよっぽど面白いんじゃないかと思った。


「講義、行かなくていいの?」


ふと我に返り声をかけると、リョウクは焦って荷物をまとめ、校舎に走っていった。



本を読む横顔に、見惚れていた自分に気づいた。


その存在に、触れたいと思う自分に気づいた。





次の日、いつもリョウクのアラームが鳴るのと同じ時間に、俺もアラームをセットした。


本を読み始めたリョウクの横顔を、ゲームをしているふりで眺めた。



2人の、アラームが鳴った。


驚いたリョウクが、俺を見た。


アラームを止めるのも忘れ、見つめ合った。




それが、俺たちの始まりだった。




2019.03.11 Mon l 《好きシリーズ①》好きだなんて言えない【完】 l コメント (2) トラックバック (0) l top