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<EunHyuk>


俺の家での飲み会は、もうすっかり毎週末の恒例になった。

ドンへとジョンウニヒョンも加わって、それでなくても広くはない家はいっぱいになる。

今日はそこになぜか、シウォンまで。



「毎週のように場所提供して割り勘って、
ヒョクいいの?」

「材料も酒も余ったら俺がもらえるし、
俺も楽しいからいいんだよ。
まあ、酒はほとんど余らないけどね」

ハハハっと爽やかな顔をして、シウォンは笑った。


「シウォナ、今日ヨンウニヒョンは?」


……普通に言えたかな。


「なんか今日はデートだって」


「あ…そうなんだ」


例の彼女かな。

上手くいってるんだ。

よかった。



……よかった?


だって、これで上手くいってないなんて聞いたら、
俺、どうすればいい?



「どうしたの? ヒョク。ぼーっとして」

気づくと隣には、シウォンではなくドンへがいた。

「いや、なんでもないよ」

「そう?」



どうするもなにも…

女々しい自分を思わずふっと笑ってしまう。



「えっ、なに? 俺なんか変なこと言った?」

「あ、ごめん。違うよ」

「よかった〜」


にへら〜っとした顔でドンへが笑う。

こいつ、せっかく顔はいいのに、なんだってこんな抜けてるんだろう、っていつも思う。

まだ来て2ヵ月くらいしか経っていないのに、すっかり懐かれた。

いつのまにかドンへが隣にいる、
なんていうのが当たり前になってきた。




珍しく今日は家飲みの後に、そのままみんなでカラオケに来た。

お酒もだいぶ入って、すでにテンションは高い。

ジョンスヒョンは、どこかのMCみたいにマイクを一本独り占めして曲紹介とかやってるし、ドンヒヒョンなんて誰の歌の時でも、ずっと踊ったり合いの手を入れたりしてる。

ソンミニヒョンとリョウクはパフェなんか頼んじゃって、さながら女子会だ。

意外だったのはジョンウニヒョン。

なんだか不思議な人だなぁ、と思ってはいたけど、歌声があまりに素敵で鳥肌が立った。

リョウクなんか、パフェのスプーンを持ったまま釘付けになっていた。



俺は、と言えば…


「あれ、寝ちゃったんですか?」

キュヒョンが飲み物を差し出して言った。

「うん。すっかり」

目線の先には、
俺の膝枕でくうくう寝ているドンへ。

「なんか大型犬みたいですね」

「なんだっけ、ゴールデンレトリバー?」

「あー、似てるかも。
脚、大丈夫ですか?
あっちの長椅子に移します?」

「いや、いいよ。大丈夫」


キュヒョンの申し出を断って、そのまま寝かせてやる。




サラサラの前髪。

整った顔立ち。

ぽかーんと開いた口……がちょっと残念だ。




なんだろうなぁ、こいつ。

いつのまにかすっと懐に入り込んでいる。

まるで昔からそうだったみたいに。



こんな奴、初めてだ。



ドンへと触れているところから

ドンへの暖かさが伝わる。



心が、ふわっと暖かくなった気がした。








2018年もあと少しですね。
始めて間もないこちらにお越しくださり、ありがとうございました。

2019年もどうぞよろしくお願いいたします( *´ ω ` )


明日は連載中の『触れる想い』本編はお休みし、
番外編をお送りします。


本編は、1月3日より再開します。
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2018.12.31 Mon l 触れる想い【完】 l コメント (3) トラックバック (0) l top

<DongHae>


職場というより、部活みたい。

それがここの印象。

とにかく賑やかで、仲がいい。

そんなところに新しく来て馴染めるものかと思ったけど、そんな心配いらなかったみたいだ。



赴任して4日後には、課のみんなでヒョクの家で飲んでた。

ほぼ毎週末、ヒョクの家で飲むのが恒例らしく、俺もヒョクの家に行くのはもう今日で4回目。



帰りにみんなでスーパーに寄って、材料と飲み物を買いこむ。

ソンミニヒョンとリョウクが料理をする。

俺とキュヒョンが飲み物を冷蔵庫にしまったり、料理が出来る前にすぐにつまめるものを出す。

ジョンスヒョン、ジョンウニヒョン、ドンヒヒョンは先に飲みはじめる。

ヒョクが皿やら箸やらを用意する。

そうやってすっかり役割分担も決まってる。



話すのはほとんど仕事のこと。

でも愚痴とかそんなんじゃない。

どうしたらもっと良くなるかとか、前向きなことがほとんど。

だから帰るころにはまた来週もがんばろうって気持ちになる。

前にいたところでは、飲みに行っても仕事の話にはほとんどならなかったし、たまにしたとしても先輩の愚痴を聞くことが多かった。

だから、こんな風にポジティブな気持ちになれるヒョクの家での飲み会が俺は楽しみになった。





「ドンへ、お前もう酔ってんの?」

隣にヒョクが腰を下ろす。

「うん? そうかも〜」

「弱いんだから、もうその辺にしろよ」

やれやれって感じで俺を見る。


ヒョクは結構世話好きみたいだ。

まだこっちに来て1ヵ月くらいだけど、困ってるといつも最初に気づいてくれる。

なんだか昔から知ってる友達みたい。





いつのまにかウトウトしていた。

ぼーっとする意識の中で、俺の左側があったかい。

ヒョクの背中にもたれかかってる。

なんだか安心する。

なんでだろ?




「あれ、ドンへ、寝てる?」

覚めない意識の中、声がする。

…ソンミニヒョンの声だ。

「うん。子どもみたいだね」

…子ども、って、ヒョクひどいなぁ。

「なんか、懐かれちゃったね。ヒョク」

「ね。犬みたい」

…今度は、犬?




「…ヒョク…もう平気?」

「…何が?」

「…泣いてない?」

「…うん」

「そっか。それならいいんだ」




なんだろう…?

今は、起きちゃいけない。そんな雰囲気。



俺の知らない話。

俺の知らないヒョク。





胸が、なんかモヤモヤする。





モヤモヤの正体を、俺はまだ知らない。



2018.12.29 Sat l 触れる想い【完】 l コメント (2) トラックバック (0) l top


<EunHyuk>


こいつ、大丈夫かな?

なんだか、ぽや〜んとして…

顔はまあ、うん…モテそうだな。


でもなんか…変なやつ。





「イ・ドンへです。よろしくお願いします」


2日遅れでやってきた彼は、みんなの前での自己紹介で、本当にそれしか言わなかった。

普通、趣味とか特技とか、前のとこでどんなことしてたとか、他にも何か言うものなんじゃないかと思うけど。


「えーーっとーー、
じゃあみんなも自己紹介して、
その時にドンへ君に質問を、ね?」

ジョンスヒョンもほら、戸惑ってる。




同じフロアのみんなが、1人1人自己紹介をしていく。

といっても、みんな彼よりも元からいたメンバーの受けを狙って、変なことを言ったりする。


今だってシウォンが、

「趣味は空想恋愛です」とか言ってるし。

それ、一昨日ジョンウニヒョンの初出社のときに、ドンヒヒョンが言ったやつのパクリじゃん。


「ドンへ君の趣味は何ですか?」


「えっ…あ……空想恋愛、です」



…………!!!



一瞬の静寂。

「…フッ…」

誰かが堪えきれず吹き出すのが聞こえると、みんな一斉に笑い出した。


こいつ、おもしろいかも。

やっぱり、なんか変なやつ。


でも、嫌いじゃない。

そう思った。






「ドンへ、お前おもしろいやつだな」


その声に、一瞬だけ動きが止まる。

通りがかったヒョンは、隣の彼に声をかけて肩をポンポンと叩いていった。



俺に声をかけることは、ない。

あの家飲みから1カ月ほどが過ぎた。

少しずつ、痛みは減ってきている。

まだ好きかといえば、そうだとは思う。

でも、前ほど心がヒョンでいっぱいになったりは
していない。

泣くことも、もうない。





「あの…ヒョクチェさん…」

隣から遠慮がちな声。


「ん? なに?」

「さっきの人の名前って…」

「…ああ、ヨンウニヒョン?
隣の課の人だよ」

「ああ、そうでした。ヨンウンさん」

英単語でも暗記するみたい。
口元だけでブツブツ言ってる。


「…あのさぁ、ヒョク、でいいからね?」

「えっ?」

「俺のこと。先輩達もヒョンでいいし」

「…じゃあ俺も、ドンへで」

「ん。わかった」



照れたみたいに微笑んで、またドンへはデスクに向かった。



俺も。


さあ、仕事だ。



2018.12.27 Thu l 触れる想い【完】 l コメント (0) トラックバック (0) l top


<DongHae>


初めて会った時のことが、なぜか忘れられない。

よっぽど印象的なことでもない限り、
初めて会った時のことなんて
それほど覚えてないものなのに。


ただ、すれ違っただけ。


ただ、それだけ。






転勤初日。


…になるはずだったのに、季節外れの大雪で乗るはずの飛行機が欠航した。

結局2日も足止めされて、空港からその足で会社に向かう。



ちょうど昼休みが始まる時間帯。

スマホの地図を見ながら目的のビルを見つけ、入り口に目を向けた時、



スーツ姿の細身の男が1人、

そのビルの自動ドアから出てきた。


そのまま

ちょうど青だった目の前の横断歩道を渡り、

少し先のコンビニに入っていった。




…ふっ、と我に帰る。

なぜだか俺は、それをずっと見ていた。

…なんでだろ…?

まあ、いいや。

とりあえず、出社しないと。





この仕事を始めて4年目になる。

初めての転勤。

就職しても勤務地は地元だったから、ずっと実家暮らしだった。

一人暮らしも初めてなら、ここみたいに冬に雪が当たり前に降るところになんて住んだこともない。

俺の地元は割と暖かくて、雪が降っても一年にそう何回もないところだ。

だから、春だというのに飛行機が雪で飛ばないなんて、想像つかなかった。





出社したのが昼休み中だったこともあって、デスクには半分ほどしか人はいない。

「休憩明けに、みんなに紹介するから」

と主任のジョンスさんに言われた。



自分のデスクにつき、荷物を色々出していた時、
隣のデスクにバサっとコンビニの袋が置かれる。



「ん? 転勤してきた人?」


顔をあげて、声の主を見る。



…あっ、さっきの人だ!


「はい。よろしくお願いします」


「タメ口でいいよ。同い年みたいだから」


「あ、うん。わかった」




一重の目をクシャっと細めて、

目尻に少しシワが寄る。



爽やかというより、

やんちゃさの残る顔で笑って、

右手を俺に差し出した。






「イ・ヒョクチェ。よろしく」




2018.12.25 Tue l 触れる想い【完】 l コメント (0) トラックバック (0) l top


<EunHyuk>



「もういっそのことヒョクの家で飲まない?」


ご飯に行った次の日、
ソンミニヒョンは出社して挨拶するなり
そう言った。

「だって、潰れちゃって寝ちゃっても平気だし、
店で飲むより安上がりだし」


夜になる頃には何故だか
ソンミニヒョンだけでなく、
他の人も何人か来る話になっていて、
帰りにスーパーで食材やら飲み物やらを
みんなで調達した。



「ヒョクヒョン、大きいお鍋ってないの?」

「リョウガ、普通男の一人暮らしなら
こんなもんじゃない?」

家に着くなり家主さながらキッチンを占拠した、
後輩のリョウクとソンミニヒョン。

「よしっ、じゃあ俺が今度家飲み用に
大きい鍋を買ってやるよ」

主任のジョンスヒョンは、
俺の家での家飲みを恒例化しようとしてるらしい。

「それよりでかい冷蔵庫買ってくださいよ。
これじゃ飲み物全部入りませんよ」

「キュヒョナ。流石にそれは無理だろ」

ドンヒヒョンとキュヒョンは
冷蔵庫に買ってきた飲み物を詰めている。




みんな、ここ、俺の家…




結局同じ課のメンバーがみんな集まった。


すっかりソンミニヒョンと2人で
飲み明かす気だったのに。

いっそのこと、
これを最後と泣き明かす気だったのに。


でもかえって良かったかもしれない。

色気のある話なんか何にもせずに、
仕事のことやらくだらないバカ話をしながら
ワイワイやる方が、今の俺には救いになった。



「ヒョク、久々だな。お前のそんな顔」

ふと、ジョンスヒョンがそんなことを言った。



自分がどれだけ
周りに心配をかけていたのかを知った。

みんなが心配しながら
そっと見守ってくれていたのを知った。



ありがたかった。

申し訳なかった。

もう落ち込んでなどいられないと思った。

久々に、心から笑えた気がした。





「そういえば、新年度からうちの課、
2人増えるから」

だいぶお酒も入ったころ、
思い出したようにジョンスヒョンが言った。

「新人ですか? 僕達、マンネ卒業?」

「リョウガ、残念だけど2人共年上」

えー⁈ と残念そうに剥れる顔が
いかにもマンネでかわいらしい。

「1人は転勤。もう1人は中途採用。
なんかヒチョルの知り合いらしいよ」

「所長の?」

ヒチョル所長の知り合い?

「あ、この間面接来てた人ですか?」

「キュヒョナ、会ったの?」

「ソンミニヒョンも一緒にいたじゃないですか。
ほらコンビニ行くときエレベーターで」

「あーそういえば」

「どんな感じの人? 俺より年上?」

「ドンヒより上だよ。ヨンウンと同じかな」




…ドキっとした。

その名前に反応しなくなるのは、

まだ先みたいだ。




「…じゃあ、ジョンスヒョン以外
みんな年下じゃないですか」

動揺を抑えて言う。

「でも仕事の上では後輩だから、みんな頼むね」

「はい」

返事をしながら、
隣のドンヒヒョンが背中をトントンと叩いた。

ソンミニヒョンも
"大丈夫"と目線を送ってくれる。





…うん。大丈夫。

大丈夫に、ちゃんとなる。



2018.12.23 Sun l 触れる想い【完】 l コメント (0) トラックバック (0) l top

<EunHyuk>


「ヨンウニヒョンと上手くいってないの?」


仕事終わり、
ソンミニヒョンにご飯に誘われた。

よく行く半個室みたいになってる居酒屋で
注文したものが大体揃った頃、
ヒョンが突然そんなことを言い出した。

俺は本当にびっくりして、
思わず飲んでいたビールを吹き出しかけた。



「えっ?」

「あれ? 付き合ってなかったの?」

「え…あー……」

「…僕のことなら、気にしないで。
前に言ったことも忘れてくれていいし」

「でも…」

「好きは好きでも、僕はなんというか、
憧れが大きくなっちゃったって感じだから。
ああいういかにもな男らしさって、
僕にはあまりない部分だからさ」


ヒョンは、俺を安心させるみたいに
穏やかな顔をしていた。


「でも、ヒョクの好きは違うんでしょ?」

「…………」

「見てればわかるよ」

「…ヒョン…」

「一時期いい感じだったのに、
ここしばらく2人の様子もおかしいから、
気にはなってたんだ。

もしかして、僕が前にあんなこと言ったから
ヒョクがずっと気にしてるんじゃないか、って」



なんだかとても申し訳なかった。

そんな風に気にしてもらえたのに、

俺は自分の辛さだけでいっぱいいっぱいで、
ソンミニヒョンの事は頭になかった。


人の気持ちを蔑ろにして、
自分勝手な恋に走った結果、

このザマだ。




「わざわざしゃしゃり出るのもな、
って思ったんだけど、
今日のヒョクの顔見たらさすがに話さないと、
って思ったんだ」

「…ヒョン、ごめん…違うんだ…」

「え…?」



話さなきゃ。
ソンミニヒョンのせいじゃない、って。

これは、俺の問題。

そしてもう、手遅れ。



「違うって、何が?」

「ヒョンのせいじゃない。
むしろ俺が謝らなきゃ。
俺、ヒョンの気持ち聞いてたのに…」

「それは本当に気にしないで。
今は上手くいってくれたらいいと思うよ」

「…もう、ダメなんだ」

「ダメ、って?」

「…ヨンウニヒョン…彼女いるんだって」

「…なにそれ…
…付き合ってたんじゃなかったの?」

「…どうなのかなぁ…わかんない…」





ほんと、どうなのかな…?

今ではもう、あの告白さえ
幻だったんじゃないかと思える。

確かに、この耳で聞いたのに。




「…もう、終わりにするんだ。俺…」

「ヒョク…」


ソンミニヒョンは、
なんだか申し訳なさそう顔をしてる。


「ヒョンがそんな顔することないよ」

「……話でも、お酒でも、いつでも付き合うから。
ひとりで溜め込んだりしないでね」

「うん…。ありがとう」

「よしっ! 飲もうっ!
…って言いたいとこだけど…明日にしよっか。
明後日休みだし」

「そうだね」





終わりにしよう。

この瞼の腫れがひいて普通に戻ったら、

俺も、普通の俺に戻ろう。





もう、ヨンウニヒョンのためには泣かない。


そう決めた。



2018.12.21 Fri l 触れる想い【完】 l コメント (0) トラックバック (0) l top


<EunHyuk>


誰が見ても泣き腫らしたと分かるような顔で
出社した。


挨拶する人みんながみんな、
気づいてないふりっていう態度で、
なんだかちょっと笑えたくらい。


でも、ヨンウニヒョンの表情だけは
わからなかった。

これまではなんとか仕事だからと頑張って
挨拶くらいは顔を見ていたけど、

昨日のドンヒヒョンの話を聞いた後では、
もう顔を見たら崩れてしまいそうで、
怖くて見られなかった。





「お前、その顔どうした?」

唯一、聞いてきたのが所長だった。

「…あの、昨日シャンプーが
がっつり目に入って、擦りすぎちゃって…」

「ふーん…」



なんだろう…

所長のこういう所が、ちょっと怖い。

すごく親しみやすいヒョンではあるけど、
やっぱり規模は大きくなくても所長なだけあって
仕事は出来るし、何より人を観る能力に長けている
と思う。

なんでもお見通しで、
隠し事なんかできない感じがする。



「ま、無理はするな」

そう言って、俺の肩をポンとひとつ叩いて
デスクに戻っていった。






「目、大丈夫? ヒョク」

席に着くと、
ソンミニヒョンが声をかけてきた。

「大丈夫。そのうちおさまるよ」

「…なんかあった?」


ソンミニヒョンには、言えない。

「いや、擦りすぎただけだから」

「…そう?」

「…うん…」






「僕ね、ヨンウニヒョンのこと、
好きかもしれない」



ソンミニヒョンがそう言ったのは、
ヨンウニヒョンと手を繋いだ、
あのBBQの片付けをしている時だった。

その時の俺は、
気づいたばかりの恋心に戸惑っている上に
そんなことを聞かされて、ただ混乱した。


ソンミニヒョンになんと返したのか、
覚えていない。


そうなんだ、とかなんとか、
当たり障りない事を言ったような気がする。


いろいろな言葉が頭の中を駆け巡って、

でも最後にたどり着いたのは、



『ダメ』


『イヤ』



という自分勝手な感情だったのは覚えてる。

その感情に任せて、
無意識に体は動いていた。

気づいた時にはもう、
俺はヨンウニヒョンの隣で皿を洗っていた。

あ、と思って顔を上げると、
こっちを見てるソンミニヒョンと目があって、すぐに視線が逸らされた。

ヒョンの気持ちを聞いて
すぐこんなこと…

最低だ…




きっと、俺の気持ちはバレたんだと思う。

むしろ何か勘づいていたからこそ、
あんな事を言ってきたんじゃないかと
今になって思っている。





あれ以来、ソンミニヒョンがヨンウニヒョンの話をしてくる事はなかった。

俺も、付き合い始めたことも、
その後のことも何も言っていない。

その他のことなら割となんでも話せるのに、
恋愛についてだけはあれ以来タブーになってる感じだった。




だから、その日の夜、
ご飯に誘ってきたソンミニヒョンが
突然話したことに、俺は本当にびっくりした。




2018.12.19 Wed l 触れる想い【完】 l コメント (0) トラックバック (0) l top


<EunHyuk>


やっぱり、もう一度話がしたい。


ダメならダメで、ちゃんと終わらせたい。




「もしもし、ヒョク? どうした?」

「…ドンヒヒョン、遅くにすみません。
あの…ヨンウニヒョンの連絡先、
教えてもらえませんか?
間違えて消しちゃって…」

迷った末に、
同じ課のドンヒヒョンに電話をかけた。

入社してすぐ隣の席だったドンヒヒョンは、
何かあると相談にのってくれる頼れる人だ。

「いいけど…お前、その声どうした?」



風邪気味だとごまかそうとしたけど、
様子がおかしいと気づかれてしまった。

電話口でまた涙が止まらなくなって、
心配したドンヒヒョンが
遅い時間なのに家まで来てくれた。



ヨンウニヒョンとのことを、正直に話した。

話してみて初めて、
ずっと誰かに聞いて欲しかったんだと、
誰にも言えないから余計に苦しかったんだと
気づかされた。

ドンヒヒョンは、ただ静かに聞いてくれた。


「…すみません、こんなこと。
聞いても困りますよね…」

「いや…困りはしないけど……
お前は…その…ゲイなの?」

「そういう訳じゃないです。
彼女いたこともあるし…」

「そっか…ヒョンも違うしな…」

「…えっ…?」

「…いや…言いにくいんだけどさ、
ヨンウニヒョン、
彼女出来たって聞いたから…」

「………えっ…」

「…シウォンと合コンに行って、
そこで会った子と付き合い始めた、って。」

「…それ…誰から?」

「本人」

「…いつから…?」

「ひと月くらい前」




うなだれるしかなかった。

なにも言葉が出てこない。

涙も、出ない。



「…ヒョク…大丈夫か?」

「…………」

「…俺が言うのもなんだけど、
連絡、もうしない方がいいと思う。
お前がすり減るだけだよ」

「…………」

「…それでも番号知りたければ教えるけど、
余計に苦しくならないか?」

「…かもしれませんね…」




そっか。

だからか。

ヒョンは本当に、
俺が諦めるのを待ってるのか。

妙に納得した。

するしかない…。




「…それとも、
俺からヒョンに連絡するように言おうか?」

「…いえ、…それは…」

「そっか…。
ヒョク、話ならいつでも聞くから。
溜め込むなよ」



結局、連絡先は教えてもらわなかった。

ドンヒヒョンが帰ってベッドに寝ころがる。



もう鏡を見なくても
感覚でわかるくらい瞼が腫れてる。

「あーあ、明日仕事なのに…」

冷やさないと、
そう思っても動く気にならない。




もう、やめよう。

きちんと別れ話をする気が、

ヒョンには本当にないんだから。





涙ももう枯れたみたいで出てこない。






こんなに好きだったなんて、




自分でも思ってなかった。



2018.12.17 Mon l 触れる想い【完】 l コメント (0) トラックバック (0) l top


<EunHyuk>


「ヒョク、なんか元気ない?」


昼休憩でコンビニに買い物に出ると、
追いかけてきたシウォンに声をかけられた。

「いや、そんなことないけど?」

「そう? ならいいけど」


同期のシウォンは隣りの課なこともあり、
毎日のように顔は合わせるが、
言葉を交わすことは普段はあまりない。

それでもやっぱり同期なだけあって、
飲み会などで話す機会を重ねるにつれて
仲良くなった。


実はいいとこのお坊ちゃんで、
会社の近くのかなり広いマンションに住んでいる。




「ヨンウニヒョンは相変わらず
シウォナのとこ入り浸ってんの?」

「うん。荷物取りに行くくらいしか自分の家には帰ってない」

「それ、もう家賃とった方がいいんじゃない?」

「だよなぁ…」



内心、ドキドキしながら探りを入れる。


電話もメールもダメなら、
仕事終わりに捕まえればいい。

それが出来ない1番の理由がこれだ。


シウォンと同じ課のヒョンは、
仕事が終わると当たり前のように
シウォンと2人でシウォンの家に帰る。

そこでヒョンだけに声をかけるのは
やっぱり難しい。


『シウォナのやつ、
ヒョクのこと気に入ってるみたいだから、
俺らのことはまだ秘密な』

最初のデートのとき、ヒョンが言った。

別に誰かに言うつもりはなかったけれど、
それでも秘密と言われると、
やっぱり言えない関係なんだと寂しかった。







今日もまた、挨拶だけで終わった。

やっぱり声はかけられなかった。



夜、1人の部屋でもう日課のように
スマホに手を伸ばした。

いつまでこんなこと、続けるんだろう。

いっそ、番号もアドレスも消してしまえば、
ふっきれたりするのだろうか。

ふとそんな考えがよぎる。



迷って、迷って、

"削除"




「…っあ…っ、…」

途端に視界がぼやけてくる。


どうして消したりしたんだろう。

一瞬で後悔した。

俺が諦めたら、きっと本当に終わりなのに。

ヒョンはきっと、それを待ってるんだ。



もうわかってる。



でも俺の心はまだヒョンに向かっていて。


いっそ終わりにしたいのに、

溢れるものが止まらない。




「…もう…いやだ…」





2018.12.15 Sat l 触れる想い【完】 l コメント (0) トラックバック (0) l top


<EunHyuk>


どうしたらいいか、わからない。

何か気に触るような事をしただろうか?

職場ではいつも通り。

挨拶も、仕事の話もする。

でもそれ以外はシャットアウト。

電話も出ない。

メールも返ってこない。

そうやってもう、1ヶ月。




告白は向こうからだった。

6月のある週末の飲み会。
次の日が休みなこともあって明け方まで続いた。

俺はその日は風邪気味で、珍しくほとんど飲んでいなかった。

解散して、明るくなり始めた帰り道。

1人で歩いていると、メールの着信音が鳴った。


"俺、ヒョクのことが好き。

付き合ってほしい。"


信じられなくて、でも嬉しくて。

なんと返していいかわからなくて、
結局電話をかけた。


「恋人になって」

そう言われ、

「いいよ」

と答えた。





夢を見ているみたいだった。

俺もヒョンが好きだったから。




いつだったか、会社の仲間でBBQをした時、

ちょっと集合に遅れそうだった俺に気づいたヒョンが、みんなの輪を抜けて俺のそばに駆け寄った。

「早く。待ってたんだ」

そう言って俺の手を引いて走り出した。




あの時、この人が好きだ、って思った。




会社でもムードメーカー的なヒョン。

気になっていても、それまで男を好きになったことはなかったから、まさかと思った。

でも、繋がれた手がとても熱い気がして、落ち着かなくて、

ずっと繋いでいたいのに、早く離してほしいような不思議な気持ちだった。




デートだってした。

2人で映画に行ったり、ご飯も行った。
ドライブもしたし、公園でのんびりもした。

それでも、キスしたり抱き合ったりはできなかった。

したい気持ちはあっても、男同士だという戸惑いはなかなか拭えなくて、

夜の車の中で手を繋ぐのが精一杯だった。

少しずつ、進んでいけたらと思っていた。



もしかして、それが悪かったのかな。

俺のこと、つまらなかった?



わからない。

でも、きっともうダメなんだと思う。

せめて、話をしたいのに。

なのにヒョンは、何も言わず無視するだけ。

ダメならダメ、って言ってほしい。

じゃないと、俺はここから動けない。



今日もまた、電話をかける。

きっと出ないことはわかっている。

呼び出し音を、10まで数え、切る。



それで、終わり。
2018.12.13 Thu l 触れる想い【完】 l コメント (0) トラックバック (0) l top