FC2ブログ

<DongHae>


明日から夏休み。


長期休暇前の打ち上げのような飲み会は、いつもの課のメンバー以外にもたくさんの人が参加している。

普段仕事以外で接することのない人達と話せるのはいいとしても、なぜか俺の隣の席にいる人はずっと同じ。


「前からもっと話したいと思ってたんだよ」


第一印象は『空想恋愛の人』。

それからの印象は、決まりすぎの紳士。


でも今、隣で話しているシウォンは、思ったより気さくで近寄りがたい感じがない。


っていうか、むしろ、近い…




「そっちの課は相変わらずヒョクの家で飲んでるんだろう? たまにはうちにもおいでよ」

「シウォナの家、
一人暮らしのわりに広いんだよね?」


反対隣のソンミニヒョンも加わってくる。


「ほぼ二人暮らしですけどね」

「どういうこと?彼女とか?」

「あ、ドンへ知らない?
近いし広いからって、ヨンウニヒョンが入り浸ってるんだよ」

「しばらくはいなかったんですけどね。
また戻ってきましたよ」

「なんで?」

「彼女に二股されたらしいです」


…あれ? この話どっかで…


「……二股?」


俺の問いに、シウォンが頷いた。


「まあ、あまり突っ込んで聞いてはいないんだけど。だから俺の家で飲むなら、自動的にヨンウニヒョンもセットだよ」




その時、ドアから誰かが出ていくのが見えた。



あれ? ヒョクもいない…


どうしたかな?



ヒョクを探しに部屋を出た。

トイレか、そうじゃなければ気分転換で外にでも
行った?




建物の外に出ると、ヒョクを見つけた。



なんだか苦しそうな、泣きそうな顔。


どうしたんだろう?



近づこうとした時。




……ヨンウニヒョンだ。






…思い出した。


ヒョクの家での、ヒョクとソンミニヒョンの会話。


二股、って。


シウォンと話してた、って。





「……もしかして…本気じゃなかった…?」


ヒョクの声が震えてる。


「いや…ヒョクへの想いは、嘘じゃない」





……なに? これ。






気づいたら、建物の中に逃げこんでいた。



…混乱する。


ヒョクと、ヨンウニヒョン。


2人…なんかあるの?


ヒョクへの想い、って…



…もしかして…




「ドンへ? そんなとこでどうしたの?」


その声に驚いて顔を上げる。


「ドンへ? どうした? 飲みすぎた?」




…この人は、きっと何か知ってる。





「……ソンミニヒョン…


聞きたいことが、あるんです」









2日連続になりますが、
明日も奇数日なので続きをアップします( *´ ω ` )
スポンサーサイト



2019.01.31 Thu l 触れる想い【完】 l コメント (0) トラックバック (0) l top

<EunHyuk>


声をかけられて、驚いた。


ここ何ヶ月も、挨拶と仕事で必要なこと以外は話したことのない相手だったから。






明日から夏休み。

とはいっても学生時代とは違って、多い時でもせいぜい1週間くらいだけど、それでもその言葉の響きは、大人になった今でも魅力的だ。

ただし、その前日にはいつも所内全体での飲み会があるから、長期休暇の1日目は大抵二日酔いで潰れることになる。

今日もお決まりの居酒屋から二次会のカラオケにみんなでなだれこみ、明日からは休みということもあって酒も進み、いい気分だった。




今日は珍しく隣にドンへがいない。


向こうの方で、シウォンに捕まってるのを横目に、
少し酔いを冷まそうと外に出た。



天気が悪いわけでもないのに、ネオンの明かりに星空が負けている。

それをなんだかもの悲しい気持ちで見上げていると、不意に名前を呼ばれた。




「ヒョク」




……なんで?




誰の声かはわかっているのに、信じられない。


もう何ヶ月も挨拶と仕事でしか話していないのに。



「…ヒョク?」



もう一度呼ばれて、ゆっくり振り返る。



「…ヨンウニヒョン…」


「今、ちょっといいか?」


「……なんですか?」



全身が強張って、声が震える。



「その……俺、お前に謝らないと」


「…なにを?」


「いろいろ…電話出なかったり、
メールも返さなかったり」


「…なんで、今?」


「…すまん。自分勝手だよな」





涙が滲んできた。

本当に、自分勝手だ。



あの時ちゃんと話してくれていたら、
あんな思い、しなくて済んだのに。

あの時ちゃんと話してくれていたら、
今、もっとちゃんと、ドンへに向き合えるのに。




今の俺の、不安の理由。

ドンへと一緒にいる時間が長くなるにつれてはっきりしてきたこと。




『好き』と言われても、
いつ突然手を離されるかわからない。

だって、ヨンウニヒョンはそうだったから。



ゆっくり進もうなんて思っていたら、
いつか突然その時が来るかもしれない。

だって、ヨンウニヒョンはそうだったから。




だから、戸惑っている暇なんてない。



早く、早く、ドンへを全部、俺のものにして、

早く、早く、俺を全部、ドンへのものにして、

もう簡単には離れられなくしてしまいたい。




ヨンウニヒョンだけのせいだとは思わない。

でも、ヨンウニヒョンとの恋が、
今の俺の心に、影を落としている。


そして、多分ドンヘの心にも。


俺が不安がっていることに、ドンヘは気づいてる。


そういうところ、ドンへはとても鋭いから。






「因果応報、っていうやつだよ」


ヨンウニヒョンが口を開く。


「なに…それ…」


「今更なのはわかってるけど、言い訳になるけど、
ちゃんと話させてくれないか?」




…怖い。


今更…?


また俺、泣くの…?





「……もしかして…本気じゃなかった…?」



「いや…ヒョクへの想いは、嘘じゃない」





じゃあ、どうして……?



2019.01.29 Tue l 触れる想い【完】 l コメント (2) トラックバック (0) l top

<DongHae>


ヒョクが、
俺と同じ気持ちだとわかって、嬉しかった。


キスもして、その先も少し…

…まあ、ちょっと早まったとは思うけど。




あれから1カ月と少し。

会社から帰って着替えると、ヒョクの家に行って一緒に晩ご飯を食べるのが当たり前になった。


でも、あの日以来、キスより先には進んでない。

あの日のヒョクを思い出してしまい、なんとなくできなかった。


キスをしていても、時々ひどく不安そうに、縋るようにしがみついてくることがあって、

安心してほしくて抱きしめる分だけ、俺の中の不安は増えていった。


抱き合ってしまえば消える不安なら、そうしてしまった方がいいかとも思うけど、

なんとなくそうではない気がする。



俺のこういう勘は、よく当たる。





週末、恒例のヒョクの家での飲み会は、ジョンウニヒョンが復帰して、また行われるようになった。


今日も俺はヒョクの隣。

美味しいご飯と、大好きな人達、少しのお酒で、
幸せな気分になる。



「ヒョク、ドンへまた寝ちゃったの? 」

あ、ソンミニヒョンの声だ。


「そうみたい」

「ほんと…すぐ寝るね。ひっついちゃって」

だって、ヒョクの背中気持ちいいんだもん。



「…そういえばヒョク…」

「なに?」

「その……別れたらしいよ」

「…えっ…」

「なんか、二股かけられてたって」

「…ヒョン、なんで知ってるの?」

「おととい昼休みにコンビニ行ったら、
たまたまシウォナと来てて、
ちらっと話聞こえちゃって」

「そうなんだ…」



…なんの話…?



「ヒョク…どうするの?」

「…どうもしないよ。もう終わってる」

「…ならいいけど」



終わってる…?って何が?



「ソンミニヒョン、 俺…好きな人出来たんだ」

「え…ねぇ、それってもしかして…」

「…うん。だから大丈夫。ありがとね」

「ううん。
もうヒョクのあんな泣き腫らした顔
見たくないだけだよ」

「…………」

「…ヒョク?」

「…大丈夫。あの時みたいにはならないよ」




…あの時……?


どういうこと?





完全に覚めた意識の中で、


膨らんでいく疑問と不安でいっぱいになりながら、


それでも俺は、ヒョクにもたれ、


眠りの世界の住人のふりをした。


2019.01.27 Sun l 触れる想い【完】 l コメント (2) トラックバック (0) l top

<EunHyuk>


絶え間なくキスを繰り返しながら、
互いのものを握り込み、同時に果てた。



「…ごめん、ヒョク…」


「…なにが…?」


「俺…ここまでする気じゃなかったのに…
止まれなくて…」



そう言って、体を離そうとするドンへにしがみついた。



「…これで終わり…?」


「……ヒョク?」


「…いいよ…止まらなくて、いい」


「でも…」


「……しよう?」


「…………」


「俺が……下でもいいから…しよう?」





途端に、強い力で引き剥がされた。

ドンへの瞳が、明らかに戸惑ってる。


「ヒョク…どうしたの?」


心配そうに覗きこむドンへの顔が、涙で揺らぐ。



「…しよう?」

「……ヒョク。俺…嬉しいけど…
嬉しいけど、今日はやめとこう?」

「…なんで?」


声が震える。


「ヒョクのこと、好きだから」

「じゃあ…!」

「だってヒョク、震えてる…」

「……大丈夫だよ…」

「いくらなんでも急だし、
なんかヒョク…変だよ…?」



……わかってる。

自分でも、変だって思う。


溢れる涙は止まらないし、


さっきから震えてるのがわかる。


心が通じたはずなのに、


なんだってこんな不安なんだろう。




そっと抱き寄せられ、ドンへの胸に顔を埋めた。



「どうして泣くの?」


「…わかんない…」


「…なんか、あった?」


「…………」




それ以上は何も言わずに、ドンへがただ俺を抱きしめる。

時々、子どもをあやすみたいに背中をとんとんと叩いたりして。


震えが、少しずつ治まってきたころ、

腕を緩めたドンヘが、俺の顔を見て笑った。


「ひどい顔」


「…ほっとけよ」


「でも好き」


「……っ」



また、溢れそうになる。



「ねぇヒョク?
もうちょっと、ゆっくり進もう?」


「…欲しく…ないのかよ」


「欲しいよ。…でも、大事にしたい」


「…大事に?」


「うん」



本当に愛しそうに俺を見て、ドンヘが言う。

ものすごく、照れ臭い。



「…擦りっこまでしておいて?」

「えっ?!
あっ、ほんとだっ! うわっ!ごめんっ!」



照れ隠しの俺の言葉に慌てる様子が可笑しくて、笑ってしまう。

そのうちにドンへも笑いだした。





この笑顔の、隣にいたい。



ずっと。


ずっと。




だから、ドンへ。




ずっと、俺を好きでいて…?



2019.01.25 Fri l 触れる想い【完】 l コメント (0) トラックバック (0) l top

<DongHae>



一瞬の、くちづけ。




ヒョクの瞳の中に、


俺と同じ想いが見えた。






吸い寄せられるように、再び唇に触れた。


もうそっと触れるだけでは終われなくて、唇を押し付けあう。


もっと、もっと触れたくて、空いた手でヒョクの頭を引き寄せる。


繋いだ小指は、いつのまにか手のひらを合わせ、全ての指を絡めるように変わっていた。


ヒョクのもう片方の手が、俺の腰にまわる。


唇のわずかに開いた隙間から、入りこむ。


舌が触れ合い、それだけじゃ足りないとばかりに、絡ませる。



深く、深く。


「ん…」


遠慮も、余裕もない。






ようやく唇を離した時には、
2人ともすっかり息が上がっていた。


ヒョクの瞳が、俺をとらえる。



「…ドンへ…」


「…ん…」


「…これってさ、

…そういう事だよな?」


「…うん」


「…同じ?」


「…うん」



ヒョクを、そっと抱きよせる。



「好きだよ…ヒョク」



腕の中のヒョクが、
おずおずと俺の背中を抱きしめる。



「俺も…」



腕を少し緩め、もう一度見つめ合うと、
ヒョクの目が見開いた。


「お前…泣いてんの?」


頬を手のひらで包まれる。


あったかい。


「だってヒョ…っ」


言葉の続きは、ヒョクの唇に吸い込まれた。





もっと。


ヒョクの腰を抱き寄せる。


どうしよう、止まらない。


そのままベッドに倒れこみ、覆い被さるように深くキスを繰り返す。


だんだん、唇が痛くなってきてる。


手のひらで、ヒョクをなぞる。


首から鎖骨、胸、脇腹…


「…っあ…」


Tシャツの裾から手を滑らせ肌に触れると、
ヒョクが小さな声をあげた。




その声で、我に返る。


荒い息遣い。


上気した頬。


潤んだ瞳。


見下ろしたヒョクは、なんだかとても儚げで、
それなのにどこか妖艶さがあった。



「…ごめん…俺…」

いくらなんでもがっつき過ぎだ。




「…終わり?」


「えっ?」



ヒョク…?



「…やめんなよ」

「…でも……!!!!」


不意に、ヒョクの手が俺の熱に触れた。


「さっきから当たってる」


「……っ…ヒョ…ク…?」




服の上からさするように撫でられて、





理性が飛んだ。


2019.01.23 Wed l 触れる想い【完】 l コメント (0) トラックバック (0) l top

<EunHyuk>


本当はDVDを観たいとか
そんなのどうでもよかった。


ただ離れがたくて、ドンヘを誘った。




俺もシャワーを浴びて着替え、ドンヘと2人で外に出る。

起きたのが遅かったから、近所のファミレスで遅めの朝飯、兼早めの昼飯を食べる。

そのままレンタルショップに寄り、目的のDVDともう1本、ドンヘが好きだと言った映画を借りる。

スーパーにも寄り飲み物や食べ物を買って、俺の家に戻る。



DVDをセットし、すぐ届くところに飲み物を用意する。

クッションや枕をベッドの壁ぎわに並べ、それを背もたれにして並んで座り、再生ボタンを押す。





静かな部屋に、映画の音声だけが響く。


ドンヘと俺だけの時間。



今までなら、当たり前のように互いに少しだけ寄りかかっていたのに。


薄紙一枚分の距離にドキドキしながら画面を見る。




ドンヘが、わずかに身じろぎした。


その拍子に指が触れあった。





神経という神経が、全部触れた指に集まる。


映画の内容が、頭に入らない。


もっと。


胸の奥から湧き起こる衝動。


でも…


葛藤する心を映すように指がためらう。


思わずピクリと動いてしまった俺の小指。


つられるように、ドンへの指もわずかに動く。


そっと、その手をうかがい見る。


ドンへも、見ているのがわかる。




ドンへの手が、動いた。


指切りをするみたいに小指を繋いでくる。


触れているところを確かめるように、


ゆっくり視線を上げる。


指が、

ひじが、

腕が、

肩が。




そして、伏し目がちのまま、


コツン、と額を合わせた。




視線の先には、


少し薄めの、ドンへの唇。


少し厚めの、俺の唇。





目を閉じる。


吸い寄せられるように、唇が触れ、


離れた。




永遠みたいな、一瞬。




目を開け、視線を上げる。



まっすぐな瞳に、


捕まる。







もう一度。





次は、一瞬では終われない。






2019.01.21 Mon l 触れる想い【完】 l コメント (0) トラックバック (0) l top

<DongHae>


ぼーっとした視界が、少しずつ焦点を結び始めると、あれ?っと思った。


ここ、どこ?


寝返りを打とうとすると背中に何かあたる。

確かめようと身をよじる。


「えっ?!」


思わず声が出た。


「んー? ドンヘ…?」


「…ヒョク…?」


「ん…おはよう…」


「あ…うん…おはよう…」



ヒョクは右手で頭の後ろを掻きながらゆっくりと体を起こし、ベッドに胡座をかいた。


「お前、昨日寝入っちゃったから」

「あー…ごめん」


うわっ。めっちゃ恥ずかしい…

きっと俺、顔が真っ赤だ。


恐る恐る顔をあげると、ヒョクがまじまじと俺を見ている。


「…な、なに?」

「いや…服、しわしわだな」

「えっ? あ…」


どうしよう。
シャツも、スーツのスラックスも、しっかり皺が寄ってる。

慌てた俺に、ヒョクが笑った。

「そのまま寝たからな。
なんか適当に服貸すから、シャワーしてこいよ」





なんか、すごくドキドキする。

洗ってあるとはいえ、
ヒョクの服からはヒョクの匂いがする気がして。

ー抱きしめられてるみたいー

そんな考えがよぎって、なんというか…

…こっぱずかしい…





シャワーから戻ると、キッチンにいるヒョクと目があった。

「服のサイズ、大丈夫?」

そう言いながら、ココアの入ったマグカップをくれる。

「うん、大丈夫。なんかごめんね」

「いや、別にいいよ」




ベッドを背もたれにして座り、ヒョクと並んでテレビを見る。

ほんの少しだけ、腕が触れてる。



…このままこうしていたいな。


でもそういう訳にもいかないか。


このココアを飲んだら帰ろう。






「ドンヘ…お前今日、なんか予定ある?」

「…ないけど?」

「じゃあ、DVDでも借りてきて観ない?
この間の映画の一作目、観たくなってさ」

「うん!」


勢いよく返事してしまった。

ヒョクが、一拍置いて楽しそうに笑う。


「ほんと、犬みてぇ…!」

「ひどっ! なんだよそれー」




お腹を抱えて笑うヒョク。





やっぱり俺、犬みたいでもいいや。





ヒョクが笑ってくれるなら。


2019.01.19 Sat l 触れる想い【完】 l コメント (2) トラックバック (0) l top

<EunHyuk>


晩飯を一緒に食おうと、ドンヘを家に誘った。


今日は、人数もいなかった分だけ、本当に忙しかった。

昼はデスクでパンをかじっただけだったし、

帰っていくドンヘの背中が本当に眠そうで、

きっとこのまま帰ったら、飯も食わずに寝るんじゃないかと思った。





今、俺の隣で眠ってる。


晩飯の後、お茶を飲みながらベッドを背もたれに並んでテレビを見ていたら、いつのまにか肩に重みがあった。

やっぱり疲れてたんだな。

それは俺もだけど。


明日は休みだし、このまま泊めることにする。



起こさないように、そっと肩からドンヘの頭を外し、ベッドに引き上げる。


…結構重い。


それに、全然起きる気配もなさそうだ。


少し大胆に壁ぎわの方に転がす。


「んー…」という声にちょっとビクッとしたけど、
起きたわけではないみたい。




サラサラの前髪。

整った顔立ち。

ぽかーんと開いた口……がやっぱり残念だ。




手が、その頬に伸びる。




触れる。






ジョンウニヒョンのことを聞いた日、

俺の頭の中に浮かんだのは、ドンヘだった。


なんだか気まずくなっていたから、

このままもし会えなくなったら後悔すると思った。



あの日、ドンヘが泣いた時。

どうしてあんなこと思ったんだろう。


『ドンヘの涙を受け止めるのは、俺の役目』







向かい合うように、ドンヘの隣に寝転がる。


ドンヘの頬に触れた手が、離せない。


親指で、頬骨をなぞる。





「ドンヘ」



名前を呼ぶ。

返事はない。



「ドンヘ」



声が震える。




「ドンヘ」



視界が滲む。





「ドンヘ…」







今は、起きないでくれ。



今だけ、見つめさせてくれ。



気づいたばかりで、隠せないから。






俺の頬を一筋伝うもの。



それを拭うように



ドンヘの頬を拭った。









カンインさん、Happy Birthday╰(*´︶`*)╯

ここではこんな役柄でごめんなさい…
出番はあまり無いのに、存在感はたっぷりで、メインの2人に次ぐ重要度なのでお許しをm(._.)m

このタイミングで番外編カンインsideとかをアップできればよかったんですが…

そうすると、どうしても話の展開に影響しちゃったり、ネタバレになっちゃったりするので見送りました。

機会があればそのうちぜひ、と思います。


活躍される姿、待ってますよ〜


2019.01.17 Thu l 触れる想い【完】 l コメント (2) トラックバック (0) l top


<DongHae>


ジョンウニヒョンの、

あの言葉の意味を考える。




ある日突然、大切な人がいなくなる。

それは誰にでも起こりえることだけど、
誰もがどこか自分には無縁だと思っている。

そして自分の身にそれが起こった時、
激しく後悔するんだ。



大切だと思っていながら、

ちゃんと大切にしなかったことを。


伝えたいと思っていながら、

ちゃんと伝えなかったことを。


側にいたいと思っていながら、

ちゃんと側にいなかったことを。



きっとジョンウニヒョンは後悔したんだ。


どんなことかはわからないけど、

二度と取り返せない後悔を。




あの日俺に言った言葉。

『何か思っていることがあるなら、
言える時にちゃんと伝えておけよ』

俺の、ヒョクへの態度を見て、
ジョンウニヒョンは感じたんだ。

"もし今それが起これば、ドンヘは後悔する"

って。





ジョンウニヒョンに、感謝しなきゃ。

俺に、大事な事を気づかせてくれた。





俺は、ヒョクの隣にいたい。

好きだ、とは言えないけど。

男の俺がそんなこと言っても、

きっとヒョクは困るから。



でも。

好きだ、とは言えないとしても。



俺は、俺なりに、ヒョクに伝えるんだ。


好きだ、って。

大切だ、って。

愛してる、って。


ヒョクの隣で、笑うんだ。

俺が笑って、

ヒョクが笑顔になってくれたらいい。

ヒョクが幸せでいてくれたらいい。

ヒョクに触れたところから、

俺の幸せが伝わってくれたらいい。






ジョンウニヒョンの妹さんの葬儀には、代表でヒチョル所長とジョンスヒョン、手伝いとしてソンミニヒョンとリョウクが行った。

週末のその日、会社に残ったのは、ドンヒヒョン、ヒョク、キュヒョン、俺の4人。

いつもの半分しかいない分、仕事は山の様にあったけど、戻ってきたジョンウニヒョンに負担をかけないように、黙々と仕事をこなした。

それでもやっぱりいつもの時間には終わらず、いつもより2時間ほど残業し、疲れきって会社を出た。




「おつかれ」

ビルを出たところで、ヒョクが後ろから声をかけてきた。

「うん。おつかれ」

「ドンヘ、晩飯どうすんの?」

「もう今日は適当に済まそうかな、って」

「…じゃあ、うちで食ってかない?」

「えっ?」

心臓がはねあがる。

「実家からおかずいろいろ届いたんだけど、
量が多くてさ。食べるの手伝ってよ」

「…ああ…うん。わかった」




ほっとしたように、ヒョクが微笑んだ。

優しい、優しい目をして、俺を見る。





大好きだよ、ヒョク。


幸せだよ、ヒョク。


俺は。


その瞳に、見つめられるだけで。


2019.01.15 Tue l 触れる想い【完】 l コメント (0) トラックバック (0) l top


<EunHyuk>


ジョンウニヒョンが飛び出していった後、

所長が会議室に課の全員を集めた。





「ジョンウンのことだけど。
妹さんが亡くなったと、病院から連絡が来た」





今年の始め、ジョンウニヒョンのご両親と妹さんが乗った車が、事故にあった。

交差点で、赤信号で突っ込んできた車と衝突したらしい。

その事故でご両親は亡くなり、妹さんは意識不明の重体になった。

実家を出て、地方の銀行に勤めていたヒョンは、
妹さんの側にいるために、幼馴染のヒチョル所長の紹介でこの会社に転職した。

そして今日、入院中だった妹さんの容態が急変し、
亡くなったらしい。




「何日か、ジョンウンは休むことになるから、
みんなその分のフォローを頼むな」

所長はそう言うと会議室を後にした。

所長の話にみんなが戸惑って、
重たい空気が部屋に広がっていた。




「ジョンスヒョンは、
ジョンウニヒョンの事情知ってたんですか?」

しばらくしてドンヒヒョンが言った。

「うん、一応ね。
みんなに気を使わせるし、
妹さんは必ず元気になるからって、
言わないでおいてほしいって」






毎日、どんな気持ちでいたんだろう。

これまでのジョンウニヒョンの様子を思い返してみても、そんなこと微塵も感じさせない表情しか思い浮かばない。




「とりあえず、ジョンウンの仕事は
みんなに振り分けるから、よろしく頼むね」

ジョンスヒョンの言葉を合図に、デスクに戻った。






隣から、鼻をすする音がする。


「ほら」


ティッシュを差し出すと、遠慮がちに受け取った。


ドンヘの目は真っ赤だ。


「大丈夫か?」


「…うん。ありがとう」


「…仕事中だぞ」


そっと、背中をさする。


「…うん…わかってる」





ドンへの背中に触れた手で、そっと引き寄せた。



もう片方の手で、肩をさする。



落ち着いて。


大丈夫。


心の中で、そう唱えながら。




ドンへの涙は、ちゃんと俺が受け止める。




それはきっと、俺の役目なんだろう?








2019.01.13 Sun l 触れる想い【完】 l コメント (0) トラックバック (0) l top