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リョウクの食事に何かの破片が混入されていた、あの警告のような出来事以来、警戒はしているものの特に間者が動いているような様子はなかった。

季節は夏の盛りを超え、最近では時折吹く風の中にも秋めいたものを感じとることがある。






「ジョンウン!」


朝、いつものように使用人について部屋に入ると、ジョンウンを待っていたのは拗ねたような顔をしたリョウクだった。




共に食事を摂るようになって以来、2人の距離は急速に近くなっていった。

部屋を出ると今まで通り、感情の変化があまりなく見えるリョウクではあったが、この部屋でジョンウンと2人の時のリョウクは、穏やかな表情を見せることが多くなった。

ジョンウンもまた、わずかなリョウクの表情の変化を感じとることができるようになっていた。

それは、リョウクが少しずつジョンウンに心を開くようになったからだけではない。





「どうかしましたか?」

「どうかしたじゃないよ。なんで言わないの?」

「……何をでしょう?」

「誕生日! 過ぎちゃったじゃん!」



2週間程前に過ぎた自分の誕生日のことなど、ジョンウンですら忘れていた。

だが、昨日たまたま何かの話の流れで、リョウクの使用人とそのような会話になった。


「え……あぁ、そういえばそうですね」

「お祝いも何もしてないじゃない。言いなよね」




家族を亡くしてから、誰かに祝ってもらったことなどない。

もうその日はジョンウンにとって特別な日でもなんでもないのだ。

それは、ジョンウンがこの世に生まれ存在していることを喜ぶ人がいないのと同じで、その日を覚えていることはジョンウンにとってある意味苦しいことでもあった。

1人になってからの長い年月の間に、忘れることで自分の心を守っていたのかもしれない。





「祝いなど…必要ありません…」

「…必要ないわけないでしょ? 何言ってるの」

「リョウク様…」

「とにかく今日は代わりの日にするから。いいよね?」









その日の夜、リョウクの部屋の食卓に並んだものを見て、ジョンウンは驚いた。


「あれ? 気にいらないもの、あった?」

「いえ……」


それどころか、そこに並んでいたのはジョンウンの好物ばかりだった。


「あの…なぜ…?」

「毎日一緒に食事してれば、好きそうなものくらいわかるよ」




あ……照れている。



心の中に小さな灯りが灯ったような、不思議な感覚をジョンウンは覚えた。


リョウクが自分をきちんと見ていてくれたのだということが、ジョンウンの心を踊らせる。




これは……




抱くべきではない感情が芽生え始めていることを、薄々ジョンウンも感じていた。



そしてそれは日々大きくなり、確信へと変わろうとしていた。




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2019.06.30 Sun l 氷の花【完】 l コメント (0) トラックバック (0) l top


いつもご訪問ありがとうございます。



来たる7/1(月)は、イトゥクさんのお誕生日〜*\(^o^)/*

この日はイトゥクセンイル記念FFをアップします。



いやぁ……難しいです。トゥギさん。

書くのが苦手なメンバーっているもので、私にとってはそれが83lineの2人。

トゥギもヒニムも、これまでお話のサブキャラとしてしか書いたことがなかったんです。

脇を固める役回りであれば、どんどん動いてくれるので書きやすいんですが、メインにするとまぁ、難しい…(´•ω•̥`)


……と、言い訳を先にしておいて。
もしこんなのトゥギさんじゃない〜!! って思っても、「ごふなりに頑張ったんだな」ってスルーしていただけると助かります(^^;



その、がんばったお話、結局全く新たなところからお話を立ちあげるのは出来ませんでした……

で、困った時の『好きシリーズ』頼み!

シウォン、キュヒョンの勤める建築事務所の所長ジョンスさんのお話です。

本編とは全く無関係なので、結果的にこれ単体でも問題なく読めるものになりました。

いやぁ、偶然って素晴らしいっ( *´꒳`* )



そしてこのお話、ある意味で、ここを当初から訪れてくださってる方へのプレゼントでもあります。

日頃の感謝と、エールを込めて。




ということで、7/1はイトゥクセンイル記念FF『僕の好きな人』を20時にアップします。


また、この日は『氷の花』の更新はお休みです。


よろしくお願いします( * ॑˘ ॑* )




ごふ




2019.06.29 Sat l お知らせなど l コメント (0) トラックバック (0) l top



「ドンヘは、またなのか?」


イトゥクの冷めた声が食堂に響く。

ここ数ヶ月、ドンヘは朝食の時間になっても姿を現さないことが多くなった。

それが決まって雨が降った翌朝であることに、イトゥクもリョウクもまだ気づいている様子はない。

夜明けの直前までヒョクチェの元にいたドンヘが、その後すぐに眠りについたとしても寝過ごしてしまうのは当然と言えば当然であった。







「間者?」

「うん。リョウクの食事の中にね、なにかの破片が入っていたんだって」

「大丈夫だったのか?」

「怪我は少しだけ。でも…どうかな、多分参ってると思う」


その言葉に、ドンヘを抱きしめるヒョクチェの力がほんの少し強くなった。

そのわずかな変化が、ドンヘを嬉しくさせる。


「俺は……大丈夫だよ?」

「うん……何が狙いなんだろう…」

「わかんない。……また、リョウクを人質に、とか誰か言ってくるのかも」

「そっか……」



険しい顔をして寄ってしまったヒョクチェの眉を、ドンヘは指先で撫でた。

途端にその表情は柔らかいものへと変わる。


「ヒョク?」

「ん?」

「ごめんね?」

「何が?」

「こんな話、楽しくないよね…」


思わず八の字になったドンヘの眉を、今度はヒョクチェの指がなぞる。


「不安で、弟が心配なんだろ?」

「うん……」

「そういうの、知らない方が嫌だよ」

「ヒョク……」




やはり、何があってもヒョクチェから離れられる日など来ないと、ドンヘは思った。

例えばもし妃を迎える時が来ても、自分はきっとこうしてヒョクチェとの逢瀬を続けてしまう。

もしヒョクチェがドンヘから離れようとしたとしても、絶対に離してやることなど出来ないだろう。




「ねぇ、もう一回しよ?」

「だめ。歩いて戻れなくなったら困るだろ?」

「そうだけど…」

「ドンヘ……」


ヒョクチェの両手がドンヘの頬を包み、その額に優しく唇で触れた。


「このまま、世界が止まっちゃえばいいのにね」

「……止まったら、俺らも動けないけど?」

「えっ?」

「こうやって触れることも、抱きしめることも出来ないけど?」

「……そっか。じゃあダメだね」


ドンヘのその言葉にハハッと笑って、ヒョクチェは再びドンヘをその腕の中に閉じ込めた。


「でも……そうだな…」


そう言って抱きしめるヒョクチェの腕の力は、思いのほか強い。

その強さが、本当はヒョクチェこそが世界が止まることを望んでいるようにドンヘには思えた。




立場の違いを思ってなのか、いつか来る別れを思ってなのか、ヒョクチェが想いを言葉にすることはない。



だが、ふとした拍子に伝わってくるヒョクチェの気持ちは、言葉などいらないほど深く、大きなものだとドンヘは感じていた。




2019.06.28 Fri l 氷の花【完】 l コメント (0) トラックバック (0) l top



間者の正体が掴めぬまま、日々は過ぎていく。


再び心を閉ざしたかに思えたリョウクの様子も、過ぎていく時間の中でまた少しずつ落ち着きを取り戻していった。

しかしその表情は柔らかさからはほど遠く、まるで氷の壁を厚くしてしまったかのようにジョンウンには感じられた。







ガシャンと音がしたほうにジョンウンは目を向けた。


「リョウク様!?」


口元を手で押さえ、目には涙が浮かんでいる。


「どうなさいました?」


リョウクが怯えるように見つめる視線の先を辿ると、皿の上に赤く染まった何かの破片が見えた。


「食べ物の中に、これが?」


コクコクと何度もリョウクは頷いた。

すぐに医師を呼び、怪我の手当てをさせる。

幸いにも口の中や舌は切れてはおらず、唇の傷もさほど大きくはなかった。



今日はイトゥクもドンへも王宮にはおらず、リョウクは1人で自室で食事を取っていた。

何かの拍子に割れた皿の破片が入ったとでもいうのか?


「それは、ないと思う…」

「……なぜですか?」

「だってこれ…腸詰めの中から出てきたんだもん」


それはつまり、調理の過程で入れたということか?







「うーん……間者からの警告、とかかなぁ?」

報告を受けたイトゥクの言葉に、リョウクの表情は凍りついた。

「どういうこと?」

「命に支障はない程度に怯えさせて、心が弱くなったところで、手を差し伸べるんだよ。自分のところに来ればもうこんなことは起こらないよって」

「そんな……」

「本当に警告かどうかはわからない。ただ、これで間者の狙いがリョウクであることははっきりした。
ひとまず、調理場の関係者を調査させている。リョウクの食事は担当を固定して作らせるから安心して」

「はい…」








その後から、リョウクの食は極端に細くなった。

いくら安心出来る者に専属で作らせているとは言っても、それは致し方ないことのようにジョンウンには思えた。


「食べないのですか?」

「うん…もういい」

「……食べてもいいですか?」

「……は?」


その言葉に唖然としているリョウクを横に、ジョンウンは残された料理に手をつけた。


「ちょっと……何やってんの?」

「すみません、腹が減ってまして…それに美味しそうなのにもったいないです」

「でも、なにか入ってたら…」


戸惑っているリョウクに、ジョンウンは微笑みを向けた。


「大丈夫です。リョウク様のお食事は調理長が1人で作っておりますから」

「そうだけど…」

「リョウク様が幼い頃からずっと仕えている信頼の置ける者だと、陛下もおっしゃっていました。
それに……これ、とっても美味しいです。こんな美味しい物、初めて食べました」


「…………ふっ……」



リョウクが、笑った。

それは、リョウクが初めてジョンウンに向けたものだった。



「ジョンウンって、変な人だね」

「……そう…ですか?」

「うん。とっても」


リョウクの口元には、微かな笑みが浮かんでいるかのように、ジョンウンには見えた。


「明日から、2人分作ってもらわないと」

「え…?」

「僕の分がなくなっちゃう」



ジョンウンは突飛な自分の行動が、リョウクの不安を少しは取り除けたのであればいいと思った。


次の日から、本当に2人分が用意されるようになり、ジョンウンはリョウクと食事の席を共にするようになった。


口数は多くはないものの、たわいも無い話をすることも少しずつ増え、次第にリョウクの表情が柔らかくなっているようにジョンウンには感じられた。




2019.06.27 Thu l 氷の花【完】 l コメント (0) トラックバック (0) l top


本棚からあの手紙を見つけた日から、リョウクはジョンウンに文字を教えるのを止めた。

いや、ジョンウンが習うのを躊躇ったという方が正しいのかもしれない。



リョウクの態度は、あの日のことが嘘のように無機質なものに戻っていた。

少しずつ見え始めていたリョウクの柔らかな部分まですっかり鳴りを潜めてしまい、ジョンウンにはそのことが却って不自然に映った。







「手紙…ですか?」

「はい。古い物だと思うのですが…」


イトゥク、ドンヘ、リョウクの3人が食事をとる間、控えの部屋でジョンウンは気になっていたことをシウォンに尋ねた。


「…恐らくですが、かつてリョウク様付きの護衛だった者からのではないかと思います」

「かつての?」

「はい。王子や王宮の者に剣を教える師範の息子で、ソンミンといいました。リョウク様は幼い頃からその者に剣を習っておりまして、後にリョウク様付きになりました」

「その者は、今何を?」

「おりません。3年程前になるでしょうか、ベルデ王女の婚儀に出向いた際、隙をついてリョウク様を狙った輩からリョウク様を守ろうとして相討ちに」

「それは…リョウク様の目の前で、ということですか?」

「はい」




手紙を愛おしそうに撫でていたリョウクの表情を、ジョンウンは思い出していた。

どのような人物かはわからないが、リョウクにとっては特別な存在であったのだろう。

感情の起伏をほとんど見せることのなかったリョウクの心の内に、今もまだその者がいるのだとわかる。

ジョンウンにとっての大切な者たちは、既にもうこの世から居なくなってしまった。

だから大切な者を失う悲しみは、痛いほどよくわかるのだ。






ベルデとジョーヌという2つの大国の間にはこのアスールがあるため、緊張関係にある2国が直接国境を接しているところは多くはない。

ジョンウンの生まれ育った村は、ジョーヌとの国境を接する数少ない村の1つで、ベルデの北の端にあった。

国全体を挙げての争いにまでは発展しなくても、国境付近での小競り合いは頻繁に起きていた。

しかし、その小競り合いはそこに住む者達にとっては決して小さなものなどではない。



ジョンウンは、子どもの頃にそれらの度重なる小競り合いで家族を失った。

家族の中でついに最後の1人になってしまった時、ジョンウンは村を離れた。

流浪の生活を送る中で剣の師範をしている者と縁があり、その腕を認められ、以来剣の腕がジョンウンの生きる糧となった。






誰かを守るということは、今のジョンウンにとってはただの仕事に過ぎない。


報酬と引き換えに、命じられたことに従って対象となる者を守るのが仕事だ。





だが、あの古ぼけた手紙を書いた者にとって、リョウクを守るということは恐らくただの仕事などではなかったのではないかと、ジョンウンは思った。

そうでなければ、リョウクはあのような表情をするとは思えなかった。

きっとその者の前でのリョウクは、今のような無機質な態度などではなく、氷の扉の奥に心を仕舞い込んだりなどしていなかったのではないか。




自分にも……笑ってくれたらいいのに。



手紙を愛おしそうに撫で、泣きながら微笑んでいたリョウクの表情を、ジョンウンは思い出していた。




2019.06.25 Tue l 氷の花【完】 l コメント (0) トラックバック (0) l top



夜、王宮の全てが寝静まった頃、ドンへは今日もこっそりと部屋を抜け出す。



初めて愛を交わしたあの夜、2人は1つの約束をした。


"会うのは、夜、雨が降った時だけ"


雨は、ヒョクチェのもとへ走るドンへの姿や足音を隠してくれる。

そして小屋にたどり着いたずぶ濡れのドンへを、ヒョクチェは温めるのだ。

荒い息遣いも、思わずあがる嬌声も、2人のすべてが雨音に守られて、小屋に熱だけが満ちる。








情事の後の気怠さに身を任せて寝入ってしまいたくなるのを、いつもドンへは必死に誤魔化す。

夜が明けてしまう前には、小屋を出なければならないドンへにとって、眠ってしまうのは致命的だ。


「ちゃんと起こしてやるから、寝てもいいのに」

「ダメ! もったいない!」


ドンへの答えにヒョクチェは柔らかく笑った。


「じゃあ、寝ないようになんか話せよ」

「えーっと……小さい頃の話とか?」

「うん。して?」



ヒョクチェの腕の中で、ドンへは小さい頃の話をする。

父である先王の剣をこっそり振り回して怒られたこと、イトゥクのお気に入りのペンを壊してしまって怒られたこと、リョウクのピアノの練習の邪魔をしてやっぱり怒られたこと。


「怒られてばっかりじゃん。そんなんで普段大丈夫なのか?」

「心配?」

「ドンヘの周りの人がね」

「ひどい!」


ドンへの言葉に、ヒョクチェはあの太陽のような笑顔で笑う。

その笑顔にドンへは何度でも見惚れた。





夜明けが近づいてくると、次第に2人の間に言葉がなくなってくる。

あと少しの逢瀬の時間を惜しむように、互いの体に腕を回し、その鼓動に耳を傾ける。

目が合えば頬に触れ、瞳の奥を見つめあう。

ヒョクチェがその心の内を言葉にすることはないけれど、それでも見つめてくる瞳の強さに、ドンへは愛されていることを実感する。





最後にひとつ、触れるだけの口づけを交わし、ドンへは小屋を出る。

いつも小屋が見えなくなる手前で、一度だけ振り返る。

開け放ったままのドア。

そこに佇む愛しい人。

小さく手を振って、ドンへは王宮へ戻っていく。

いつも、ドンへが見えなくなるまでヒョクチェは見送ってくれる。

それだけで、ドンへは幸せだと思った。








溺れているという自覚は、ドンへにもある。

毎夜雨を待ちわびて、その時のために他の友人たちと出かけることはなくなった。

ヒョクチェがドンへの全てで、ヒョクチェにとってもそうであって欲しいと願う。



だが、自分の立場を忘れるほど、ドンへは愚かではない。

そう遠くない未来、現実のものとなるであろう縁談の話も日々舞い込んでいる。

既に王であるイトゥクよりも身軽な立場である分、その数はイトゥクよりも多いくらいなのだ。



その日を迎えることになったら、きっとヒョクチェは自分の元を離れてしまうだろうとドンへは思っていた。


ヒョクチェを失って、自分は生きていけるのだろうか。




ドンへの脳裏に、かつてのリョウクの姿が浮かぶ。

ソンミンを失い、抜け殻のようだったリョウクの心は今も氷で覆われている。


それはまるで、未来の自分の姿であるかのように今のドンへには感じられた。




2019.06.24 Mon l 氷の花【完】 l コメント (0) トラックバック (0) l top
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2019.06.23 Sun l 氷の花【完】 l top

『好きだなんて言えない』『好き、は言葉だけでなく』のその後のお話です。
まだお読みでない方は↑のタイトルをポチっとどうぞ。






<RyeoWook>



寝る前に、ベッドのヘッドボードを背もたれに本を読んでいると、サイドテーブルのスマホが鳴った。


時刻は深夜0時。


画面に表示されているのは、大好きな人の名前。


「もしもし?」




♬ 〜 Happy birthday to you 〜 🎶



……胸が、キュンとした。

もう。気障なんだから。



甘い、甘い、ドンヘの歌声。

そう感じるのは、僕だけかな?

他の人にも、こんなに甘く聞こえてるのかな?

だとしたら、ちょっと、ヤダな。


「リョウガ、おめでとう」

「ありがとう」

「1番のり?」

「うん」


よかった、と笑ってドンヘが言う。


「寝てた?」

「ううん、本読んでた」

「そっか……あのさリョウク」

「うん」

「窓の外、見て?」


言われるままに、商店街の表通りに面した窓を開ける。


「…え? なんで?」


窓の下には、スマホを片手に車のドアに寄りかかって、僕を見上げるドンヘの姿。


「明日…っていうか今日定休日だろ? 真夜中のデートはどう?」



なにそれ。

なんだかすごく、ロマンチック。



「行くっ」


急いで着替えて、部屋にいるヒョンに見つからないようにそっと階段を降りる。

ドアを開けて外に出ると、他の人の気配がないのをいいことに、その胸に飛び込んだ。


「…リョウク…ちょっ…」

「誰もいないってば」

「うん……」


キョロキョロと周りを確かめて、ギュッと抱きしめてくれる。


「乗って?」

「うん」








梅雨の時期にも関わらず、今夜は空に雲がほとんどない。

ドンヘの車の助手席で、その横顔を眺める。

すっと通った鼻梁、くっきりした二重なのにどこか哀愁のある瞳、少し薄い唇。


こんなカッコいい人がずっとそばにいたのに、僕、よく長い間ときめかないでいられたよなぁ、なんて思う。


「なに? なんかついてる?」

「ううん」


見惚れてたなんて、ちょっと恥ずかしい。


「どこに行くの?」

「内緒」







すっかり車通りの少なくなった深夜の大通りを走り、しばらくして住宅街を高台の方に進んでいく。


「ここ」


目の前に現れたのは、まるでヨーロッパの古いお城か教会のような、ライトアップされた荘厳な建物。


「来て」


助手席のドアを開けたドンヘに手を引かれ、訳も分からずついていく。


「勝手に入っていいの?」

「建物の中は入れないけどね。駐車場と外ならいいって」

「え……?」

「美容学校の時の先生が、今ここの責任者してるんだ」

「ここって…?」

「結婚式場。ハウスウェディング…だっけ? そういうとこ」


ドンヘはそう言って、建物の横を抜けていく。


やがて建物の裏手に回ると、急に視界が開けた。


「ぅわぁ……!」


まるで花嫁の長いベールのように、眼下に広がっている無数の光。


「キレイ……」

「だろ?」

「うん……」



「リョウク…」


夜景に見惚れる僕を後ろから抱きしめて、耳元で名前を呼ぶ。


「ずっと…俺と一緒にいてくれる?」

「…うん」

「おじさんになっても、おじいさんになっても、ずっとだよ?」

「うん」


抱きしめたまま、ドンヘが僕の左手をとる。


「じゃあこれ、貰って?」



……薬指に、銀色に輝く、約束の印。



「ドンヘ……これ…」

「……重い?」

「……ううん、嬉しい」


顔だけで後ろを向くと、唇に優しいキスが落ちてくる。


「じゃーん」


そう言って掲げたドンヘの左手の薬指にも、約束の印。



「…ねぇもしかして…この場所っていうのも、意味があるの?」

「もちろん」




それってつまり……プロポーズ…ってこと?




「まずは、お義兄さまにお許しを貰わなきゃ」

「うん……」

「……気が早いかな…?」

「……かもね…?」


やっぱり? とドンヘが笑う。


「でも俺、リョウク以外考えられないから」

「ドンヘ……」

「だからいつか、ちゃんと神様の前で誓いを立てたい。リョウクと生きてくって」



……うん。僕も。



「ドンヘ?」

「ん?」

「ありがとう」

「うん」

「…大好き」

「……うん…俺も」







おじさんになっても

おじいさんになっても

そばにいてね?

一緒にいようね?




昨日より今日

今日より明日

その先の毎日も

もっともっと好きになるから。




神様の前じゃないけれど


今日、僕はドンヘに、誓いを立てるよ。






end










永遠のマンネ、リョウクちゃん♡

お誕生日おめでとう〜╰(*´︶`*)╯♡



私、お話は全てiPhoneのメモ機能で書いて、出来上がったらこっちにコピペしてるんですね。

ちょうどこのお話をコピペして、さてさてとTwitterを覗いたら……あの、ジャカルタのヘウクですよ(≧∇≦)

バックハグで、左手繋ぐって……まんまこれではないか!!!!(*゚◇゚*)

あれですかね、どんちゃんは私のiPhone盗み見てるんでしょうか……?( ºΔº )〣

とりあえず、画面ロックのパスワードを変えておきたいと思います^^;



気を取り直して。

私をSJにハマらせた要因の1つは、リョウクちゃんのその歌声です。

透きとおるようなバラードの歌声もステキだけど、
『Drunk on the morning』のような狂おしい系の歌が堪らなく好き(//∇//)
まましったのサビとかもうっ!!\(//∇//)\

今や、溺愛のウクペンです(*・ω・)ノ

TLに流れるリョウクちゃんの笑顔が、日々の最大の癒し♡

カワイイの塊、キム・リョウク(*´꒳`*)

ハッピーで、ステキな一年になりますように!





2019.06.21 Fri l 《好きシリーズ①》好きだなんて言えない【完】 l コメント (2) トラックバック (0) l top



生涯、リョウク様を守ります。

だから僕は、もっと強くなります。

剣も、弓も、もっともっとうまくなります。

リョウク様の笑顔が、大好きです。

ずっと僕のとなりで、笑っていてください。







幼いあの日、真っ赤な顔をしてこの手紙を差し出した少年の姿を、リョウクは思い出していた。

幾年もの月日が流れ、古ぼけて少し薄くなってしまったその文字を、愛しい者そのものであるかのように撫でる。

瞳からはとめどなく涙が溢れていた。


泣くのはいつ以来だろうか。


心を凍らせるように毎日を過ごしてきたリョウクにとって、その手紙は見るのも辛いもののはずであった。

しかし、久しぶりに思いがけず目にしたそれに感じるのは、ただ溢れるほどの愛おしさだけで、どれだけ時が経っても彼を愛しく思う気持ちに変わりはないのだと知った。







リョウクは、剣が苦手だった。

いくら愛らしい王子であり護衛の者も付いているとはいえ、幼い頃から勉学と同様に剣の稽古をすることもリョウクには課せられていた。

毎日決まった時間、王宮の中庭で剣の師範について習っていたが、なかなか上達はしなかった。師範の教えは厳しく、リョウクは彼がただ怖かった。

その様子に、先王であるリョウクの父は同じ年頃の者から習うのが良いのではと考えた。




ある日、師範は彼の息子を連れて稽古にやってきた。

それが、ソンミンであった。

まだ15にもなっていない歳にも関わらず、ソンミンの剣の腕はリョウクでもその名を噂に聞いたことがあるほどで、会うまでは共に稽古などとても出来ないとリョウクは思っていた。

しかし現れた少年は、リョウクと背もさほど変わらず、また何よりも柔らかな物腰で話をした。

師範同様、稽古に手を抜くことは一切なかったが、いつも寄り添って優しく接してくれるソンミンに、リョウクはあっという間に心を開いた。

2人の兄と違って社交の場に出ることもあまりないリョウクには友がいなかったため、ソンミンはリョウクにとって唯一の友となり、剣の稽古の時だけでなく、共に時間を過ごすことが多くなった。



この頃すでにリョウクを手にしようとする輩は少なからずいて、先王や皇太子のイトゥクはその対処に頭を悩ませていた。

せめて少しでもそのような輩の目に触れぬよう、社交の場にはリョウクを出来るだけ出さないようにしていたのだ。

しかし、幼いリョウクはなぜ自分だけが社交の場に出ることを禁じられるのか理解できず、父である先王に食ってかかってもはぐらかされるばかりであった。





そしてある日、リョウクはソンミンと共に、先王とイトゥクの話を聞いてしまった。

その内容にリョウクは衝撃を受けた。

自らが、男達の欲望の対象となっているというのは、リョウクには理解しがたく恐怖ですらあった。

震える体を堪えきれず、ただ自室のベッドで丸まっていることしかできなかった。







「リョウク様」


しばらくして、ベッドで怯えるリョウクに、ソンミンが声をかけた。

リョウクが顔を上げると、ソンミンは顔を真っ赤にして一枚の紙を差し出した。



それが、この手紙だった。


怯えていた心は少しずつ解け、暖かいもので満たされていった。



幼い2人の、初恋の始まりだった。









明日はリョウクセンイル記念FFのため、『氷の花』はお休みです。

次回更新は、23日(日)です。


2019.06.20 Thu l 氷の花【完】 l コメント (0) トラックバック (0) l top


いつもご訪問くださり、ありがとうございます(^^)


来たる21日、リョウクさんのお誕生日に合わせて、記念FFをアップします。


以前Twitterで、イェウク・ギュウク・ヘウクの3択でアンケートを取らせていただきました。

結果は、イェウクとギュウクが同率1位という嬉し悩ましなもので、その後両方準備してみたところ、長さや内容的に今回はイェウクで!と言っておりました。

ですが、その後のスジュを巡る色々を踏まえ、このサイトなりの兄さん応援として連載をイェウクのものにしたので、被らないようにセンイル記念FFはイェウク以外に変更することにしました。



お届けするのは、

『好きだなんて言えない』のヘウク

です( *´ ω ` )


『好き、は言葉だけでなく』のその後。
お付き合いを始めて3〜4ヶ月くらいと思って読んでいただければ( *´꒳`* )



ギュウク……とも思ったのですが、書き始めたギュウクがどうしても内容的に暗く、リョウクちゃんのキャラ的にもこれ絶対お祝いにならないっ!と思いまして…

またこのギュウクについては、いずれ通常の連載でお届けしたいと思います。




ということで、

6月21日(金)20時は、リョウクセンイル記念FFをお届けします。

また、この日は『氷の花』の更新はお休みします。

よろしくお願いいたします。





ごふ




2019.06.19 Wed l お知らせなど l コメント (0) トラックバック (0) l top