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<EunHyuk>



「……あ」


予約表に見つけた名前に、動揺する。


そろそろだと、わかってはいた。

あいつが来店するペースを考えれば。






好きだと言われてから、もう10日以上たった。


その間、毎日のように届くメッセージをずっと既読スルーしてる。


ずるいとは思うけど、でもどうしていいかわかんない。




いっそ、縁を切る?

お前なんか嫌いだ、くらい言って突き放す?


でも……


だって、別に嫌いじゃないし、縁はむしろ切りたくない。

ドンヘともまた違うけど、今の俺にとってシウォンとの時間は失くしたくないものだし。



……じゃあ今までのように友達でいられるか、って言われたら……


多分、やっぱり違ってきちゃうと思う。


友達でいたいって俺が言っても、シウォンがもしわかったって言っても、やっぱり意識しちゃって、これまで通りなんて出来なさそうだし。



「はぁ……」



ため息をついても解決なんかしないけど。


とりあえず、仕事は仕事だ。


集中しないと。









鏡の前では、シウォンはほとんど話さない。

ずっと、じっと、俺の手元を見ている。

それはいつものことなのに。

やけに今日は緊張して、手が滑りそうで、怖い。




……ヤバい。

今日時間かかってる。

このままじゃ、後の予約が押しちゃう。




「シウォナ……ごめん、今日時間押してて。ブロー他の子に頼んでもいい?」

「……構わないけど?」

「ごめん……」

「……終わり、何時?」

「……え……」

「話したい」




鏡越しで、目が合った。


心臓が跳ね上がるほど真剣な眼差しが俺を見てて、息がつまりそう。


慌てて目線を手元に戻す。




「……終わり、読めないからダメ」

「何時でもいい。待ってる」

「ほんとにわかんないから」

「……じゃあ、いつならいい?」

「…………」


いつ……って、言われても。


「ヒョクチェ……」

「…………10時半」

「…わかった」






逃げてたって、仕方ない。


シウォンは、ずっと避けてたら、そのうち諦めてくれるような奴じゃない。


でも……






なぁ……お前、怖くないのかよ。


俺は、怖いよ。


穏やかな関係だったのに、それが変わってしまう。


そしたら俺たち、どうなるんだ?




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2019.09.30 Mon l 《好きシリーズ②》好きだなんて言わないで【完】 l コメント (0) トラックバック (0) l top

<KyuHyun>



バイトから正社員になっても、突然一人前になんて出来るはずもない。

少なくとも半年は先輩のアシスタントにつくこと、と最初に所長のお達しもあったし。

回数こそ減ったけれど、相変わらず買い出しに走ったりしながら、先輩達のサポートについている。







「いらっしゃいませ」

「テイクアウトで」


本当はきっと俺の接客するの嫌なんだろうなぁ、と思うけど、爽やかな笑顔のバリスタは今日もそれを微塵も感じさせない。




リョウクとは、あれからまだ連絡を取っていない。


時々、彼と2人でいるところを見かけることはある。

けれど、声をかけたことはない。

漂う雰囲気が変わり、2人がそういう関係になったこともわかってる。


まだ未練があるかどうかは、正直よくわからない。

ただ、彼といるリョウクを見て最初は胸が痛かったけれど、最近少しずつ、幸せそうで良かったって思うようになってきた。


友達になれる日は、案外近いのかもしれない。






「お待たせしました」


声をかけられてカウンターを見ると、そこにいたのはドンヘさんではなく、パティシエのソンミンさんだった。


「いつもありがとうございます」

「いえ」




正直、気まずい。

なんなら、ドンヘさんよりも。



リョウクに振られたあの日、泣き顔を彼に見られた。

彼が何も言わずに放って置いてくれたのは、本当にありがたかった。

その後だって、顔を合わせても別にからかわれたりもしないし、あの時のことを聞かれるわけでもない。

なにより、そこまで親しくないのだけれど。



「お仕事、慣れました?」

「えっ?」

「あれ、卒業して就職したんですよね?」

「あぁ……元々バイトしてたとこでそのまま採用してもらったので」

「あ、なるほど」


それでも顔を合わせると、こんなちょっとした話をすることもあって、あぁ、俺すっかりここの常連なんだなぁ、なんて思う。



「ありがとうございました」


その声を背中に聞いて、店を出た。

自転車を事務所へと走らせながら、今日これからしなければいけない仕事のことを考える。








恋は、しばらくいい。


失恋の痛みには、新しい恋が一番なんてこともよく言われるけれど。


でも、そんな風に、打算みたいに始まる恋なんて、きっと本物じゃない。


そんな恋なら、しなくていい。


もし、また本物の恋に出会えたら、その時は絶対に大切にしたいから。


だから、その時が来るまで、焦ったりしないことにしたんだ。




2019.09.29 Sun l 《好きシリーズ②》好きだなんて言わないで【完】 l コメント (0) トラックバック (0) l top

☆このお話は、シンドンセンイル記念FFです。
☆こちらは、連載中の『好きだなんて言わないで』の序盤とほぼ同じ時期のお話です。





<SungMin>



その顔を見るのは久しぶりだった。

相変わらずのふくよかな体型と朗らかな笑顔で、そいつは店内を見渡した。


「いい店だなぁ」

「……どうしたの? 急に」

「親戚の結婚式でさ。夜には帰るんだけど」




ドンヒは、製菓学校時代の同級生だ。

今はここから電車で2時間ほどかかる彼の地元で、親御さんの後を継ぎ洋菓子店を営んでいる。

と言っても、彼の店は地元を中心にいくつかの店舗を持っていて、今のドンヒはパティシエではなく経営者側なのだけれど。





ちょうど昼休憩の時間になったのもあって、店内の端の席でドンヒの向かいに腰を下ろした。


「ここ、立ち退きになるんだってな」


シュークリームにかぶりつき、うまっ、とつぶやきながらドンヒが口火を切る。


「うん」

「いつ?」

「まだはっきりとは。具体的な時期とかはこれからじゃないかな」


昼食代わりのサブマリンサンドにかぶりつきながら答える。

具のメインはローストポーク、それにトマトにレタス、スライスオニオン。マヨネーズは控えめにして、その分粒マスタードを効かせてある。


「店……どうなんの?」

「まだわかんない。移転先探してるけど、いいとこなければ閉めるかも、って」

「そっか……」



このカフェの行く末は、先行き不透明なままだ。

すぐにどうこうという訳ではないが、バイトの子達の中には、すでに別のバイト先を探しはじめている子もいる。

かといって、今辞められると困る。

新しい子を雇おうとしても、そのうちなくなることが分かっている店に応募してくる子なんてまずいない。


「なぁ、ソンミナ。お前、うち来ないか?」

「……え?」

「今、もう1・2店舗増やす計画があってさ。パティシエ探してるんだ」

「へぇ……」

「ベテランにそっちに移ってもらおうと思ってるんだけど、その今ある店舗の方、お前やらない?」

「……あー」


正直、ありがたい申し出ではある。

あるけれど……


「まあ、今みたいにお前の好きに作るって訳にはいかなくはなるけど、でもここ、どうなるかわかんないんだろ? 考えてくれないか?」

「うん……」



その後は2人とも無言で、皿の上のシュークリームとサンドイッチをただただ貪った。

効かせすぎた粒マスタードが、鼻の奥をついた。






「ドンヒ」

「ん?」


帰り際、見送りに出た店先で、その背中に声をかける。


「お前は……いいの?」

「何が?」

「…自分が、作らなくて」




ドンヒもまた、本来はパティシエなのだ。

あの頃はいずれ経営に携わらなくてはいけないと言いながらも、それでもキッチンには立ち続けたいと言っていたのに。

社長である彼の父親が急に病に倒れ、仕事に就いてわずか2年目だったドンヒは突如その代行を務めざるを得なくなった。


「うーん……それ、聞く?」


朗らかな笑みを口元に浮かべ、ドンヒは言った。


「……ごめん」

「いや……いいけどさ。未練はあるよ、そりゃ。納得できるとこまでやってからにしたかったとは思う。でも……これで良かったとも思うよ」

「良かった?」

「うーん、良かった……とはちょっと違うか。後悔はしてない、ってこと。もしもう一度あの時に戻っても、多分俺の選択は同じだよ」


さっぱりとしたドンヒの表情に、それが偽りない本心だとわかる。


「正直俺、向いてると思うわ。パティシエよりこっちの方が」

「そうなの?」

「うん。好きなことと向いてることは、別みたい」

「……そうかもね」

「それに、これはこれでやり甲斐あるしな」

「そっか」

「……じゃ、行くな。また連絡するよ」

「うん」





なにやら鼻歌を歌いながら去っていく背中を見送る。


好きなことで生きられる人なんて、ほんのひと握りだ。


今の僕は、そのひと握りの中にいる。


ドンヒは、そこから外に出て、でも外の世界に居場所を見出したんだ。




「なんか……かっこいいな、あいつ」



好きなことをしてて、でも先行き不透明な自分。

好きなことではないけど、向いてることを見つけてやり甲斐を感じてるドンヒ。




「好きだけじゃ生きてけない、か……」




呟いて見上げた曇り空が、まるで自分のこれからのようだと思った。





end









Super Juniorのビジュアル担当、シンドンさん!

お誕生日おめでとう╰(*´︶`*)╯オメデトウ♡


お祝い感の少ないお話ですみません……
と、まず先に謝っておきます。



本当にシンドンさんは多才ですよね。

一体彼はいくつの顔を持ってるんでしょう?

つい先日は、名マネージャーの片鱗まで見せていましたし。

なんというか、バランス感覚のいい人なんだなぁと思います。

上手に気遣いできる人だけれど、相手に気を遣わせることはないというか。

相手や立場に応じて、ちょうどいい距離感を掴むのが上手いのかなぁと。

だからみんなに愛されて、オファーもたくさんで。


体調だけが、本当に心配です。

快復して復帰してとっても嬉しいし、やっぱりシンドンさんがいなきゃSJじゃないなぁ、と思います。

メンバーのセンイルの度に思うことだけれども、やっぱりグンピルドルなだけあって、若いとは言えない年齢なのは否めないですから、健康第一ですよね。

スパショ、私は来年になりますが、健康で、生き生きとステージで輝くシンドンさんに会えるのを、楽しみにしています☆*。




2019.09.28 Sat l 《好きシリーズ②》好きだなんて言わないで【完】 l コメント (2) トラックバック (0) l top

<RyeoWook>



僕がどうしたいか、か……


もうちょっとちゃんと決めなきゃとドンヘには言ったものの、これが結構難しい。

リフォームにしろ、建て直しにしろ、店は続けたい。

問題はその形だ。

今と全く同じことを今後も続けていくのは、恐らく難しい。

ちゃんと、考えないと。





とりあえず、店をやめる気はない。

これだけは確実。


大学関係の物の取り扱いは続ける。

あれがなかったら、売上厳しいし。

でも……


僕が好きな『本』か、って言われると、正直違う。

僕がこの店を好きなのは、ここが本の世界と自分を繋いでくれる、そんな雰囲気があるからだ。

その『本の世界』は、ここではないどこか別の世界のことで、大学の講義のような現実世界じゃない。


「でもなぁ……」


古本屋という性質上、扱うのは誰かの手から渡って来た本に限られる。

それはそれでノスタルジックではあるんだけれど……


「好きな本、仕入れたいなぁ……」


……あ。


声に出てしまってから、びっくりした。


そっか。

僕は何も『古本屋』であることにこだわってはいないのか。


「……それ……って、ありかな……?」


ちょっと、方向性が見えてきた気がする。


「うん……それだ」








「それ、ってさぁ……つまり普通の本屋さんと古本屋さんの合体、みたいなこと?」


夜、ご飯を食べにきたドンヘに早速話してみる。


「なの……かな?」

「うーん……でもそれだとかなりここ狭くない? 古本だけでもこれだけあるのに」


確かに、今でさえ一階の店舗だけで収まりきれない分を二階の納戸に入れてある。

そこに古書以外も置くとなると、いくら建て替えやリフォームをしたとしても、そもそものスペースが足りない。


「そこは……置くものを厳選する…とか?」

「本の、セレクトショップみたいなこと?」

「そう」

「うーん……それか、スペースを広げる、とか?」

「……どうやって?」

「それこそプロの出番じゃない?」


……そうだよね。


「じゃあ、やっぱり早く相談しないとかぁ」

「ヒョクに連絡してもらえば?」

「そうだね」





なんだか、くすぐったいな。


僕はこれから、人生の大事な場面を、こうやってずっとドンヘと話しながら進んでいくのかな。




だって、僕の未来は、ドンヘの未来で、


ドンヘの未来は、僕の未来だから。



2019.09.27 Fri l 《好きシリーズ②》好きだなんて言わないで【完】 l コメント (2) トラックバック (0) l top

<DongHae>



「ねぇ……やっぱりこのまま古本屋していくのって難しいのかな?」


クッキーを摘みながらリョウクが言う。

休憩時間、リョウクのところでお昼のサンドイッチを頬張りながら過ごす。


「うーん…でもさリョウク、ここを継ぐっていう時は結構強気だったよね?」

「そりゃ、建て替えてまで続けるかどうかってなったら考えちゃうよ。それに…悔しいけど、実際今まで店やってきて難しさを実感しちゃってるのもあるし…」

「そっか…そうだよね」

「でも、失くしたくはないんだ。小さい時から愛着のある場所だし、ここの空気感っていうか……わかるでしょ?」

「うん。わかるよ」




今でも覚えてる。

初めてここに入った時の、あのなんとも不思議な感覚。

それに、ここはリョウクと出会って、リョウクと年月を重ねてきた大切な場所だから。




「どこかに相談とかは?」

「シウォンさんのところは?ってヒョンには言ってるんだけど…まだ連絡とかはしてないみたい」

「ああ…建築士、だったっけ?」

「うん」








シウォンは、ヒョクのことが好きなんだと思う。

それはその…恋愛的な意味で。



初めて会った、ばあちゃんが入院したあの時、リョウクに強く言われて戸惑うヒョクを支えていたあの表情に親近感を覚えた。


俺と同じだ、って。


俺がリョウクをそばで守りたいと思うのと同じ色を、ヒョクを見つめるシウォンの瞳に見つけた気がしたんだ。

でも、あの頃のシウォンにその自覚はなかったみたいだけど。




ヒョクは……?

今は反対はしないけど、俺のリョウクへの気持ちを良くは思っていなかった。

でも……




幸せになってくれたら、それがどんな形でもいいと俺は思う。

ヒョクは、周りに甘えたりすることがほとんどないから、あの時のシウォンの姿にちょっぴり期待してしまう俺もいる。

もちろんそこには、ヒョクの気持ちがなかったら意味はないんだけれど……








「……ドンヘ、どうかした?」

「ううん。なんで?」

「なんか、口開けてぼーっとしてたし…ってそれはいつもだった」


ゔっ……反論できない…


「ごめんごめん」


全然ごめんじゃない顔で、リョウクが笑う。


こんな少しのことで、幸せな気持ちになれるって、俺って単純。



「僕がどうしたいかを、もうちょっとちゃんと決めてからじゃないと、ヒョンも相談しにくいよね。きっと」

「かもね」

「……考えてみる」

「うん」

「ちゃんと決まってなくても、ドンヘは話聞いてくれるでしょ?」


頷くと、リョウクがにっこり笑った。


「リョウクの未来は、俺の未来だから」


びっくりしたみたいに目を見開いて、その頬が染まる。


「もう……そういうこと、サラッと言わないでよ」


リョウクは、案外照れ屋らしい。


恋人になって初めて知った、新たなリョウク。



こうやって、俺はまたひとつ、リョウクを好きになるんだ。



2019.09.26 Thu l 《好きシリーズ②》好きだなんて言わないで【完】 l コメント (2) トラックバック (0) l top



いつもご覧いただきありがとうございます( *´ ω ` )


さて。
来たる28日は、シンドンさんのお誕生日〜♬.*゚

この日は通常お話の更新をお休みしている土曜日ではありますが、センイル記念のFFをアップします。







えーと…………すっごい難しくて……


と言いますのも、ここ、腐った妄想サイトじゃないですか。
SJメンの中で、シンドンさんだけはどうやってもそっちの方に発想がいかなくてですね……

なんとか浮かぶかなぁ?と思ったシンウクですら、結局お父さん?ってなってしまい……

なかなかネタが決まらず、1ヶ月ほどあーでもないこーでもないと、グダグダ書いては消し書いては消ししておりました。





……で、結局なのですが、困った時の『好きシリーズ頼み』発動です^^;


元から、今連載中の『好きだなんて言わないで』の中で登場させる予定ではあったので、その時期を前倒ししてちょっと番外編チックにしてみました。

なので、センイルFFと言うよりは、連載中のお話の一部という感じになっております。







ということで、28日(土)の20時は、シンドンセンイル記念FF『好きだけじゃ生きてけない』があがります。

よろしくお願いします(^-^)





ごふ




2019.09.26 Thu l お知らせなど l コメント (0) トラックバック (0) l top

☆このお話は『あの日の約束』の2人のお話です。
まだお読みでない方はそちらからどうぞ。





ヒョンは、寂しがりやだ。


それは、まだ俺らが子どもの頃からずっと変わっていなくて、物心ついた時もう俺は、この人のそばにいてあげなくちゃと、何の疑問も持たずに思っていた。


まだ小学校にすら上がる前の俺の一番古い記憶には、公園のブランコで泣きそうになっていたヒョンがいる。





それでも、これが恋であることを自覚したのは、中学生になってからだった。


いわゆる思春期という時期で、周りでも彼女が出来る奴がポツポツと出始めた頃。

彼女がいる奴らも、そうでない奴らも、顔を合わせれば、やれ何組の誰々ちゃんが可愛いだの、誰々の姉ちゃんの胸がどうこうだの。

全然違う話をしていたとしても、必ずそんな話題にいつのまにかすり変わったりしていた。


そんな中で俺は、どこかその話の波に乗り切れなかった。

興味がなかったわけじゃない。

っていうか、興味はあった。

そういう雑誌やビデオの類も、みんなで集まれば見ることもあったし、興奮だってしたし。

だから女の子がダメ、っていうわけではないんだと思う。

ただ、みんなが言うほど彼女が欲しいと思ったりはしなくて、周りに話を合わせて騒いでいる自覚はあった。



その理由に気がついたのは、仲間の1人が遂に彼女と一線を越えたという話を聞いた時だった。

どうだった? とそいつを取り囲んで、みんなで息を潜めた。


想像した。

ごく自然に。


多分、他の奴もそうだったと思う。

好きな子や、あるいは好みのアイドルを思い浮かべて。

みんながその話に夢中で聞き入っている中、俺はひとり呆然とした。


ごく自然に想像したその相手が、ヒョンだったから。









「キュヒョナ」


重たい瞼をなんとか開くと、ヒョンの背中が見えた。


「俺、時間だから行くぞ。お前休みだからっていつまでも寝てんなよ」

「うん……ヒョン……」

「ん?」


ジャケットを羽織りながら、ヒョンがこちらを向く。



なんで、この人なんだろう。


寂しがりやで、4つも上のわりに頼りないし。

笑うと可愛いけど、普段の目つきは怖い時あるし。

時々、何言ってるか本気でわかんないし。



「好きだよ」



物心つく前からそばにいて、俺にはこの人の他に選択肢がなかった。

他の人に惹かれる隙すらなく、俺の人生にはいつもヒョンがいた。



「……なんだよ、急に」


そんな怪訝な表情すら、愛しい。


「うん……」

「……どうした? なんかあったか?」


ベッドに腰かけたヒョンが、俺の顔を覗き込む。


「夢見てた。昔の」

「昔?」

「うん。ヒョンが好きって気づいた頃の」

「へぇ」


懐かしむように、ヒョンが微笑む。


「そばに……いてね?」

「ん?」

「俺には、ヒョンしかいないんだから。ずっと」


俺の言葉にヒョンは、布団ごと俺を抱きしめてくる。


「そんなの……俺だって」

「うん……」

「お前が最初に言ったんだぞ? ずっとそばにいてあげる、って」

「……そうだったね」


あの日の約束が、俺とヒョンをずっと繋いでいる。

他の何にも変えがたく、心の真ん中にはいつも、あの約束がある。



「……あ。マズい。行かなきゃ」

「……ずっといてくれるんじゃないの?」

「! ……仕事!」


急いで玄関に向かうヒョンを追いかけて、俺もベッドを抜け出す。


「気をつけてね」

「ん」

「財布とケータイ持った?」

「ん」

「お昼ちゃんと食べてよ?」

「ん。じゃ行ってくる」


靴を履いて、ヒョンが振り返る。


"ちゅっ"


「いってらっしゃい」

「……ん」


耳まで赤くしながらドアノブに手をかけて、そして止まった。


「……なるべく早く帰るから」


「……うん」




パタン、とドアが閉まると同時に身悶えたことは、ヒョンには内緒。


いつまでもヒョンに夢中な俺。


だから、この先もずっと、ヒョンのそばにいてあげる。




ずっと、ずっとね。





end












9/22に、累計6000拍手を超えました!

いつも読みにきてくださる皆さま、本当にありがとうございます( *´ ω ` )

特にここ何日かは、好きシリーズを復習してくださってるのか、まとめてポチっとしてくださる方が多く、6000を超えるのも想定していたよりも早くになりました。



そして、ぴったり6000を踏んでくださったのは、2000の時に続いて2度目のピタリ賞いわちゃんさん!

2000拍手記念のお話、『あの日の約束』のギュイェでもう一度ということで。

前回は兄さん視点だったので、今回はぎゅったん視点で。

思っていたより、兄さん溺愛のぎゅぎゅになりましたが、こんな感じでどうでしょうか〜?



2019.09.25 Wed l ◇短編 l コメント (2) トラックバック (0) l top

<EunHyuk>



……何? これ。


今…好きだ、って言った…?


誰が、誰を……?




心臓の音がうるさくて、周りの音が聞こえなくなった。


「ごめん……でも言わずにいられなくて」


なのに…シウォンの声だけは、はっきりと俺の耳に届く。


「…冗談…言うなよ…」

「冗談に聞こえる?」


……そうは聞こえないから…だから困る。


「…俺……帰る」

「ヒョクチェ…?」



とにかく、この場を離れなきゃ。

なぜかわかんないけど、そう思った。


財布を開く手が震えた。

適当にお札を何枚か抜き出してテーブルに置き、席を立った。


「ヒョクチェ!」


シウォンの声を無視して店を飛び出した。




心臓がバクバクして、今にも破裂しちゃうんじゃないかと思った。

シウォンの言った言葉が頭の中で何度も鳴って、どうしていいかわかんなかった。



「危ないっ!!」


クラクションの音が響く。

音の方に目を向けると、反対側から腕を強く引かれ、大きな胸に抱きとめられた。

赤信号を渡りかけたところを、追いついたシウォンに捕まった。


「……離せ」

「嫌だ。また逃げるんだろ?」

「…逃げないから、離せ」



渋々、といった感じでシウォンが俺を離す。




「驚かせて、ごめん」


シウォンが、俺を見つめている。


「でも、嘘や冗談じゃないんだ。困らせるのわかってたけど……今日のことで、もう自分を誤魔化せないくらいになってるって思い知ったんだ」

「……やめろよ」

「……やめられるならそうするよ。でも無理だ。俺には、ヒョクチェだから」



…ダメだ。

そんなのダメだ。



シウォンに、背を向ける。


「ヒョクチェ…」

「……ついて来るな」

「でも……」

「……ひとりにしてくれ」



ゆっくり、歩き出す。

シウォンは、追っては来ない。

焦って走り出さないように、でも足を止めないように、頭の中で1、2、1、2、ってバカみたいに数えた。




違う。

こんなの、違う。

踏み込んだらダメだ。

踏み込ませちゃダメだ。



シウォンは、ただの友達なんだから。




2019.09.24 Tue l 《好きシリーズ②》好きだなんて言わないで【完】 l コメント (2) トラックバック (0) l top

<SiWon>



母に仕組まれた見合いの最中、ヒョクチェから届いた一通のメッセージに、想いが募っているのを確信した。


ヒョクチェを好きなのかと思った、とドンへに言われて、迷路に迷い込んだみたいだった。

でも考えれば考えるほど、俺の中のヒョクチェは大きくなっていくばかりで、否定する余地などもうなくなってしまった。



それでも、迷っていた。

偏見などはなかったつもりだけれど、さすがに当事者になるとは予想外だ。

これまでの俺の恋愛対象は常に女性で、年齢的にも次の恋愛はそのまま結婚に繋がるのかななんて、漠然と考えていた。


なのに。


心の中をすっかり乗っ取られたみたいに、ヒョクチェのことばかり考える。

他の人なんて入る隙間などないと、あの見合いの席で思い知らされた。

息子の幸せな結婚を望む母には、なんとも皮肉な話だが。





待ち合わせの場所に向かう時の高揚感は、ヒョクチェの姿が見えた途端、それまで感じたことがないほどの緊張感に変わった。

気持ちを自覚して、初めて顔を合わせるのだから当たり前と言えば当たり前だ。




俺の姿を認めると、ヒョクチェはふわりと笑った。

それだけで高鳴る胸に、もう既に重症なのだと知った。


「いつものとこでいい? ……っていうかお前、仕事だったの?」

「いや、なんで?」

「スーツ」

「あぁ……ちょっと、用事があったから」

「ふーん」


それでも懸命にいつも通りを装い、店に入り注文を済ませた。


「今日はお祖母さんのところ?」

「うん。もうすっかり元気でさ。あ…入院の時はありがとな。ドンヘまで送ってくれたんだろ?」

「いや、ついでだったし」


たったそれだけの言い方に、ドンヘが俺より近い存在かのような言い方に、嫉妬を覚えた。


「ドンヘも、リョウクさんも元気?」

「ん? あー……うん」

「…どうかした?」

「うん……まぁいいや、そのうちわかるだろうし」

「…何の話?」


ヒョクチェはひとつ大きく深呼吸をして、俺に向き直った。


「実はさ…ドンヘとリョウク、付き合い出したんだ」

「……え?」

「その…恋人になったってこと」


……ということは、キュヒョンは…


「…そっか…」

「前からドンヘの気持ちはわかってたんだけどね、ちょっといろいろあったみたいで…まぁ収まるとこに収まった感じはしてるんだけど」

「……病院で見かけた時、2人は恋人なのかと思ったよ」

「え…?」

「なんとなくだけど」


俺の言葉に、ヒョクチェは少し考えるようなそぶりを見せた。


「…シウォンは、ひいたりとか、ないの?」

「……ヒョクチェは?」

「俺は……反対だったんだ。その…偏見とかじゃなくて、ドンヘの片想いなだけで、リョウクの対象は女の子だと思ってたから。でもリョウクもドンヘを好きなら話は別だし。2人が幸せなら、それでいい」

「そっか…」

「うちは結婚しろとか孫の顔見せろ、って催促する親もいないしね」


結婚……


「ヒョクチェは? 結婚…するの?」

「…そのうち……いや、わかんない。想像つかないよ。相手もいないし」



……ダメだ。

他の誰かになんか、渡せない。




「俺……今日、見合いだったんだ」

「……え…?」

「でも、途中で抜けてきた」

「なんで…?」

「…好きな人が、いるから」



まっすぐに、その瞳を見つめて告げた。



「好きなんだ。ヒョクチェ…」








『好きだなんて言えない』の第55、56話から続く場面です。

2019.09.23 Mon l 《好きシリーズ②》好きだなんて言わないで【完】 l コメント (2) トラックバック (0) l top

※このお話は『好きだなんて言えない』の続編です。
まだお読みでない方はそちらからどうぞ( *´ ω ` )





<EunHyuk>



「ぅわぁーー!!」


朝っぱらから物凄い声量のリョウクの叫び声で目が覚めた。

何事かと思って部屋を出てリビングに行くと、洗面器と雑巾を持ってあたふたしている。


「うわ………」

「ちょっと! ボーッと見てないで手伝ってよ!」


そんなこと言ったって。


「俺ここやるから、お前下見てこいよ。本に被害あったら困るだろ」

「あっ! そうだね、お願いっ!」




雨漏りなんて、さすがにこの建物も古いだけのことはある。

幸いにも1階の店舗部分や納戸の本に被害はなく、ひとまず今日は念のため店を閉めて、近くの工務店に応急処置を頼んだ。




「そろそろちゃんとリフォームとか建て替えとか考えた方がいい、って言われちゃった」

「そんなに古いの? ここ」

「ひいおじいちゃんが建てたみたいだから、結構なるんじゃない?」

「へぇー」

「……おい」

「なぁに? ヒョク」

「ん? ヒョンおかわりならあるよ?」

「……ドンへ、お前なんでまだ居るの?」

「え…?」


上手くいってるのは喜ばしいことこの上ないけれど、俺の前でイチャつくのはやめてほしい。


「あ、もうこんな時間?」


バタバタと帰り支度をして出ていくドンへを、リョウクも追いかけていく。



……幸せなのはいいことなんだけど、ね?

そこは、見ているこっちが恥ずかしいというか。

これまでとべったり具合はそう変わらないんだけど、なんとなく醸し出すオーラが違うというか。






「んで?」

「何が?」

「家の話」



戻ってきたリョウクが言うには、応急措置はしたけれど、建物自体の老朽化は事実だから検討した方がいいという話らしい。


「…で、どうする?」

「どうするって…どうしよう?」

「お前、店は? このまま続けたいのか?」


リョウクがこの古本屋を継ぐと言った時に、俺はそれに反対していた。

結局あの時はリョウクに押し切られたけど、この建物自体をどうにかするならまずはそこから考えなきゃいけないと思う。

街の古本屋に待ち受ける未来は、楽観視できるものとは限らない。


「そりゃあね……ヒョン、反対?」

「反対…ではないけど、厳しいとは思うよ。この機会に何か考えないと」

「うん…」

「…もし本当に建て替えたりするなら資金とか設計とか、一回どこか相談しないとな」

「あ……シウォンさんとこは? 店舗も住宅もやってるんでしょ?」



……頭には、もちろん浮かんでた。

相談するなら、シウォンだよな。

でも……








『好きなんだ。ヒョクチェ…』




あれ以来、会ってない。

……というか、会えない。



だって……どんな顔して会えって言うんだよ。





『会いたい』

『声が聞きたい』


毎日、何度も届くメッセージに、どうしていいかわかんない。


わかんなくて、何も返せない。





シウォナ。


俺、ぐちゃぐちゃなんだ。


だからもう……お願い。



好きだなんて、言わないで。




2019.09.22 Sun l 《好きシリーズ②》好きだなんて言わないで【完】 l コメント (2) トラックバック (0) l top