Mon 09/16 2019

アンバランス 2

20:000
アンバランス【完】


<KyuHyun>



リョウクがおかしいことに気づいたのは、偶然だった。



2年になって半年ほど過ぎたある時、深夜に腹が減ってコンビニに行った帰り、寮の入り口でちょうど帰ってきたリョウクと鉢合わせた。

ほんのわずかに、石けんのような香りがした。

けれどリョウクは、自室に戻ってすぐに浴室に向かった。


あれ? と思った。




何度かそんなことがあって、不思議に思ってはいた。


寮から5分ほどの公園の脇、その暗がりに一台の車が止まっていた。

運転席と助手席のシルエットが、重なった。


しばらくして、開いた助手席のドアから出てきたのは、リョウクだった。


俺の横を通り抜けた車。

運転席には、見知らぬ男。


俺に気づいたリョウクが、気まずそうに俯いた。


「お前…何やってんの?」

「何って?」

「……恋人?」

「……違う」

「違う…って?」

「……遊んじゃ悪い?」



…なんだよそれ。


そんなの、俺の知ってるリョウクじゃない。


俺の知ってるリョウクは、気づかいができて、マメで、料理が上手で、そこら辺の女の子よりもずっとかわいい顔で笑って、純粋で、時々ちょっと辛口だけど優しくて。


俺の知ってるリョウクは、恋人でもない奴と遊ぶような、そんな人じゃないはずなのに。



「お前……なんかあったのか?」

「なんか、って?」

「さっきの奴と…寝てるの?」

「…今日だけだよ…っていうかなんでキュヒョンにそんなこと言わなきゃいけないの?」

「……もしかして、今までも何回もあった?」

「だったら、何?」



…だったら……何だって言うんだろう。


どうしてこんなにも腹が立つんだ?



「…そのうち、修羅場っても知らないぞ」

「修羅場? そんなのになるような人は相手してないよ。遊びなのは向こうだって一緒」

「リョウク……」

「もういい? 僕、眠いんだよね」



俺の横を、微かな石けんの香りがすり抜けていった。


目の奥がツンとして、胸の奥がギュっとなって、俺はこの苛立ちの意味を知った。



「……修羅場を生むのは、俺か…」



振り返って見えた後ろ姿が、なんだかとても儚く感じた。



リョウク…


遊びなんて、お前には似合わないよ。




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