Thu 10/31 2019

好きの覚悟を伝えた日

20:001
《好きシリーズ②》好きだなんて言わないで【完】

☆このお話は『好きだなんて言わないで』の番外編です。




<DongHae>



『俺、結婚することはないから』


そう母さんとヒョンに宣言したのは、2年くらい前。

ソルラル明け、世間の連休を外して実家に帰った時だった。


地元の同級生達も、この歳になるとちらほらと結婚したり父親になるヤツもいて、だから別に何気ない会話の一端だったんだと思う。

誰かいい人いないの? と聞いた母さんの言葉に、曖昧に答えても良かったのかもしれない。

でも、いつか話をしておかないと、一生言われ続けるのもそうだけど、気を揉みながら言い続けるのもしんどいだろうと思ったら、そんな言葉が口をついていた。



「結婚することはない、って、どういうこと?」

「俺……ゲイだから」

「えっ?」


その言葉に、2人が固まった。


「……だってお前、高校の時彼女いたじゃん…」

「あぁ……うん。ごめん、多分本当は違うけど、そう言った方が話が早いと思って」

「ドンヘ……どういうこと?」


心配そうに言う母さんの目を、見られなかった。

飄々とした言い草をしながら、テーブルの下では膝が震えていた。


「俺……すごく、好きな子がいて。その子しか考えられなくて。でもその子、男なんだ……だから……」



そこからしばらく3人とも無言だった。

母さんとヒョンがどんな顔をしてるのか、怖くて顔があげられなかった。

重苦しい雰囲気に話したことを後悔し始めたころ、母さんが静かに口を開いた。


「お付き合い、してるの? その人と」

「……ううん…俺の、片想い」

「……どんな人?」

「……友達の、弟で……可愛くて、優しくて、俺のことも、兄貴みたいに慕ってくれて……だから言えないんだ。言ったらもう…今みたいにそばにいられないから」


話をしながら、涙が勝手に溢れた。

母さんの声が優しくて……きっとすごく戸惑っているだろうに、理解しようとしてくれているのがわかって。

ありがたくて、申し訳なくて。


「だからって、結婚することはないなんていうのは飛躍しすぎだろ?」


ヒョンの言うことは、確かにその通りかもしれない。

でも。


「……昨日今日のことじゃないんだ。気持ち自覚してからだけで、もう何年も経ってて……でもそれよりももっと前から俺、その子しか見てないんだ」

「お前……」

「もう……一生続くのを覚悟するだけの時間が過ぎてるんだ。だから……」


言葉を失って、深くため息をついたヒョンの背中を母さんが撫でる。


「ドンヘ……あなたはそれでいいの?」

「……うん」

「親としては、幸せでいてほしいのよ?」


……だよね。


「幸せだよ。その子のそばで、その子の幸せを見守っていくのが、俺の幸せ」

「ドンヘ……」

「本当にいい子なんだ。母さんもヒョンも、会ったらきっと大好きになるよ。だから……」


ごめんね、母さん……ヒョン……


「だから…諦めろって……言わないで……」











「ドンヘー。電話鳴ってるよ」


リョウクの呼ぶ声がして、慌てて服を着て脱衣所を後にする。

切れてしまった電話に、履歴から折り返した。


「母さん? ごめん、風呂だった」


来月末、知り合いの結婚式でこっちに来るらしい。


「あ、そうだ」


キッチンでお茶を入れてたリョウクを手招きし、隣に座らせる。


『なに? どうしたの?』


スピーカーに切り替えたスマホから聞こえる母さんの声に、リョウクの目が丸く見開いた。


「母さん……俺、恋人できたよ」

『「えっ?!」』


リョウクの声と、電話の向こうの母さんの声がハモって、なんだかすごく幸せな気分だ。


「実るはずないと思ってた片想いが、実ったんだ。すごいだろ?」

『…………』

「……母さん?」

『…………そう…っ』



母さん……泣いてるの?



『今度……ちゃんと紹介してくれる?』

「……今、一緒にいる」

『…そうなの?』


見つめると、リョウクは戸惑いながらも頷いてくれた。


「オモニ……こんばんは。リョウクです」

『……あぁ…本当に? リョウクさん……』






片想いを打ち明けた後、しばらくして母さんが俺のところに来た。

ばあちゃんが夕飯に招待してくれて、その時にヒョクとリョウクとも顔をあわせた。


「あの子でしょう? あなたの好きな子って」


俺のアパートへ帰る道すがら、母さんはそう言った。


「……うん」

「可愛くて、優しくて……言ってた通りね。確かに大好きになったわ」

「……でしょ?」



それ以来、母さんもヒョンも俺の恋のことには何も言わなかった。

黙認してくれてるだけで、ありがたかった。







『ありがとね……リョウクさん……』

「いえ……その……」

「俺がずっとリョウクを好きなこと、母さん知ってるんだ」

「え……そうなんですか?」

『ドンヘのこと……よろしくお願いします』

「……はい」






ねぇ、母さん?


いっぱい心配かけてごめんね?


でも俺、ちゃんと幸せ掴んだよ。


絶対、絶対、大事にするから。


だから。


これからもどうか、見守っていてください。







end









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