Sun 12/22 2019

君と紡ぐ未来 1

20:002
君と紡ぐ未来【完】

<JongWoon>



よく、夢を見る。

夢の中の俺は、いつも誰かを抱きしめて眠っている。

それはとても幸せな夢。

目覚めると、ついそのぬくもりを隣に探す。

それが誰なのかもわからないのに。








お化けっていると思う?

妖精は? モンスターは?

鏡の向こうの世界って、あると思う?

あの山に、魔女っていると思う?



小さい頃の俺は、そんなことばかり言っては親を困らせる子どもだったらしい。



空想の世界は、無限の可能性を秘めている。

あるはずのないものを存在させたり、出来るはずのないものを可能にしたり。

そんなふうに頭の中でお話を広げては、ひとりでワクワクしているような……まぁ、早い話が人より空想癖の強い子どもだった。



夢の中も、そんな空想の世界に支配されていた。

ゲームの主人公みたいに腰に剣を下げて彷徨い歩いたり、攫われたお姫様を救ったり、荒野で敵と戦ったり。

小さい頃の俺の夢の中では、よく俺は腕の立つ剣士になっていた。



でも夢は、朝が来れば終わる。

続きが気になっても、そんな都合よく続きを見られることなんかまずない。

だから、いつも俺はその夢の続きを頭の中で思い描いた。


まさか、将来その空想癖を活かして食っていくことになるなんて、これっぽっちも思わずに。







大学のころ、軽い気持ちで短編ファンタジー小説の賞に応募した。

大賞こそ取れなかったものの入選し、そこから俺の作家人生が始まった。

爆発的なヒットはなくても固定ファンは結構いるらしく、ありがたいことに問題なく作家を続けていけるくらいには売れているらしい。



締め切りに間に合わない、なんてこともあまりない。

頭の中に物語が浮かんでくるスピードの方が、それを文章に起こすスピードよりも上回っていて、今のところ話が浮かばなくて困るという経験は皆無だ。

そういう意味では、俺はあまり手のかからない類の作家なのかもしれない。








その日は新作の原稿を担当が取りに来る予定だった。

早々に担当に渡す分のUSBを用意し、のんびりとキッチンでコーヒーを淹れて待っていた。




「イェソン先生、申し訳ありません。担当の者が体調を崩しまして本日来られませんので、代わりに参りました」

「そう……で、君は?」

「編集部の、キム・リョウクと申します」



そう玄関先で挨拶した彼は、こう言ってはなんだけれど社会人には到底見えなかった。

大学生が背伸びしてスーツを着ているような、そんな感じ。

なのに佇まいはどこか凛としていて、なんというか、きちんと育てられたお嬢様、といった雰囲気だった。

お嬢様、だなんて彼には失礼かもしれないが。



だがそれよりも気になったのは、彼と目があった瞬間の、俺自身の感覚の方だった。

既視感とでもいうのだろうか。


「あの……どこかで会ったこと、ありますか?」


気づけばそんな、ナンパする男の常套句のようなことを口走っていた。

だが、彼はそれにあっさりと答えた。


「はい。一度弊社のパーティーで」





だから、その時すぐにはわからなかったんだ。



これが、運命の出会いだってことに。



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